INTERVIEW

きのこ帝国 『フェイクワールドワンダーランド』 Part.1

フェイクだけどワンダーな自身の環境を受け入れ、〈音楽をやることの意味〉を改めて見い出した結果……メロディーの強度を格段に増した傑作が完成したよ!

きのこ帝国 『フェイクワールドワンダーランド』 Part.1

 きのこ帝国の新作『フェイクワールドワンダーランド』は、佐藤(ギター/ヴォーカル)のメロディーメイカーとしての資質が開花し、バンドの自由な表現力が解放された、実に素晴らしい作品である。日本のロック・シーンのど真ん中へと、本作で足を踏み入れることになるだろう。

 「今回、自分のなかのテーマとしては、メロディーが強い曲を入れたいと思ってました。〈歌が耳に飛び込んできて覚えちゃう〉みたいな、そういうのが理想でしたね。自分の無意識にあったかもしれない、曲を作るうえでの制約も取っ払ったので、曲は楽しく作ることができました」(佐藤:以下同)。

きのこ帝国 フェイクワールドワンダーランド DAIZAWA(2014)

 作品の方向性を決定付けたのは、枚数限定シングルとして一足早く発表され、アルバムでは1曲目に置かれた“東京”。キャッチーなメロディーと青さの残る恋心をストレートに綴った歌詞が耳から離れない、彼女たちの新たな代表曲だ。

 「最初のメロディーと歌詞がパッと出てきて、自分でもすごい耳に残るなって思ったんですけど、きのこ帝国にフィットするかわからなかったし、ちょっと恥ずかしい歌詞ではあったので、やるのはちょっと迷ったんです。でも、実際合わせてみたらグッと来て、純粋に人に聴かせたいと思いました。自分が恥ずかしいと思ってる感情って、実は聴く人にとってはいちばん響く部分かもしれないっていう気付きがあって、そこを照れて隠しちゃうのは、表現者としてもったいないなって。なので、勇気の要るリリースではあったんですけど、結果的には良かったと思います」。

 では、彼女のこの勇気はどこから生まれたのか? それは、楽曲に対する信頼はもちろん、同年代のバンドの悲喜こもごもの動向を見ながら、自分の将来について思いを馳せ、〈音楽をやることの意味〉を見い出したことが大きかった。

 「私が音楽を始めたときは、自分と似たような心境で生きている人に届いて、共有できたらいいなって思ってたんです。私はもともと近くにいる人でさえなかなか理解し合えなくて、いまだに難しいとも思うんですけど、でも曲を書いて、正直に歌うことって、直接的な心の会話だと思うから、それで普段わかり合えない人とわかり合えたら、人生変わるなって思って。音楽を作ってて、どこに向かってるのかわからないときがいちばん苦しいんですけど、自分のなかで意味を見い出せたので、そのためにもっとがんばろうと思いました」。

 この大きな心境の変化を経て、メロディーに焦点を絞った結果、各曲の曲調は実に幅広いものになっている。ヒップホップ調が新鮮な“クロノスタシス”や、サイケデリックな“あるゆえ”のアウトロでの佐藤のフェイクなどはブラック・ミュージックのテイストを感じさせるものだし、軽いノリで自由に作ったという2曲の短いインストもある。また、フォーキーなタイトル曲以降の後半は、まさに名曲連発。高校時代に作ったというバラード“ラストデイ”や、失踪したバンドの友人がモチーフとなっている“疾走”などは、シンプルなアレンジがメロディーの良さを引き立てている。

 「今回自分がやったのは曲の根本的な強化だけで、アレンジは基本的にバンドのみんなに任せました。曲がしっかりしてるぶん、定番のアレンジでも、遊びが入っても、何でもオッケーだと思えたので、それがいい結果を生んだと思います」。

 表題の『フェイクワールドワンダーランド』とは、ズバリ〈東京〉のこと。偽りの多い世界にも、きっと素晴らしい何かが存在する。それだけを信じて、4人はこれからもこの場所で、音楽と向き合い続ける。

 「同世代の売れたバンドに対して悪口を言う人もいるけど、がんばって仕事をしてる人が評価されるのは真っ当だと思うから、自分も愚痴ってる側じゃなくて、ちゃんと結果を残す側の人間になりたい。ダサいことは言ってたくないんですよ」。

 

▼きのこ帝国の作品

左から、2012年のミニ・アルバム『渦になる』、2013年作『eureka』、2013年のEP『ロンググッドバイ』(すべてDAIZAWA)
※ジャケットをクリックするとTOWER RECORDS ONLINEにジャンプ

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