スクウェア・エニックスのゲーム音楽をジャズ・アレンジで聴かせるシリーズの第3弾は、名作「ファイナルファンタジーVII」より植松伸夫が手掛けたBGMをピック。プログレ好きとして知られる植松特有の幻想的な旋律と単調ならざる曲展開を持つ楽曲群は、ジャズになっても独特の輝きを放っており、特に“片翼の天使”のジャズ・ロック的なアプローチが絶妙だ。編曲は中川英二郎(トロンボーン)と川村竜(ベース)が担当。
SQUARE ENIXの人気ゲーム楽曲をジャズへとアレンジし、新たな魅力を引き出しているシリーズ〈SQUARE ENIX JAZZ〉。既発の『SQUARE ENIX JAZZ -FINAL FANTASY-』(2017年)と『SQUARE ENIX JAZZ Vol.2』(2018年)はいずれも好評で、ゲーム音楽とジャズ・ファンの双方から支持を得ている。その最新作のテーマは〈ファイナルファンタジー〉シリーズを代表する名作で、4月にリメイク版が発売されることも話題の「ファイナルファンタジーVII」(97年)だ。
植松伸夫が生んだ名曲たちのアレンジを手掛けたのは、〈SQUARE ENIX JAZZ〉シリーズを手掛けるトロンボーン奏者の中川英二郎とベーシストの川村竜。スリリングなインタープレイを聴かせるバンドの演奏は、〈FFVII〉のダークで緊張感に満ちた世界を巧みに表現しており、BGMをジャズ・ヴァージョンに置き換えてゲームをプレイしてみたくなるほど。
いくつか曲をピックアップしてみよう。
“片翼の天使 Jazz Arrangement”には、ロックのダイナミズムやヘヴィーさがジャズの緊張感や自由さと同居しており、まるでキング・クリムゾンのよう。 ユーモラスなオルガン・ジャズ調だった“ケット・シーのテーマ”は、ファンキーなフュージョンへと生まれ変わっている。バス・ドラムの連打や細かいハイハットの刻みが印象的なリズム・パターンはビヨンセの“Don't Hurt Yourself”に似ていて、太く響くエレキ・ベースの重い低音と絡み合いながら力強いグルーヴを生み出す。ラストの“F.F.VIIメインテーマ Jazz Arrangement”は、マーヴィン・ゲイの“What's Going On”を思い起こさせる、意外性のあるソウルフルなアレンジ。原曲の荘厳さから来る感動を、まったく別の形でリスナーに体験させてくれる。
スチーム・パンク調で描かれるミッドガルの街角には、こんな音楽が演奏されるバーがありそうだ――本作を聴きながら、そう思った。そんな〈FFVII〉のジャズを生で聴ける貴重なオフィシャル・ライブが、2月にBillboard Live TOKYO & OSAKAで行われる。ラグジュアリーなBillboard Liveがミッドガルのジャズ・バーに変貌するかもしれない夜、ぜひ現場に駆けつけてほしい。