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幸宏と日本のロックの歴史がレイヤーになったヒストリカルなボックスだね

――幸宏さんが00年代以降に結成したバンド、pupa、In Phase、METAFIVEは、どれも若い世代のミュージシャンとやっていますよね。常に若いミュージシャンと交流しながら新しい作品を作っていった幸宏さんの活動の軌跡がまとめられている点でも、今回のボックスは興味深いです。

鈴木「すごい変化だよ。最初は(原田)知世ちゃんが歌っているpupaで、最後はLEO今井が叫んでいるMETAFIVEなんだから」

ゴンドウ「サウンドは変わっていくんですけど、中心にいる幸宏さんの音楽観はブレてないんですよね」

――慶一さんも幸宏さんに負けないくらいに、いろんな形で〈WORLD HAPPINESS〉に参加しています。曽我部さんとの共演に始まり、THE BEATNIKS、No Lie-Sense、Controversial Spark、そして、ムーンライダーズ。

鈴木「Controversial Sparkは〈WORLD HAPPINESS〉がライブデビューだったんだ。メンバーはライブの2ヶ月前に初めて顔を揃えたんだけど。〈WORLD HAPPINESS〉に参加することになって、そのために曲を作ってアルバムをレコーディングしたんだよ。ライブをやったことがないから、〈WORLD HAPPINESS〉に出た時は一番手にしてもらった。フェスってリハができないんだけど、トップバッターだけは20~30分だけできるんだ」

――ムーンライダーズでは3回出演されていますが、ムーンライダーズが3回も参加したフェスは〈WORLD HAPPINESS〉だけですね」

鈴木「毎回選曲やアレンジは変えてたよ。初めて出た時はフィジカルに行こうと思ったし、2回目は小島麻由美さんと一緒に出たりしてね」

――2017年には、慶一さんが幸宏さんのバンドのサポートという形で参加されています。

鈴木「その時は、初めて幸宏のツアーに参加して箱根でライブをやった時のことを思い出したよ。〈この曲、あの時にやったな〉とか。幸宏のバックで入ることってあまりないからね」

――ゴンドウさんは毎回、いろんな形で幸宏さんのバックに入られていますが、バンドごとにサウンドも違うので大変ですよね。

鈴木「相当、ストレスなんじゃない? コンピュータを扱ってるからリスクも大きいし。だから打ち上げで倒れる(笑)」

ゴンドウ「倒れるまで飲む。ビール2杯で倒れます(笑)」

――それにしても、こうやって〈WORLD HAPPINESS〉の記録をまとめてみると、日本のロック史も見えてきますね。

鈴木「このボックスはヒストリカルだよね。幸宏の歴史と日本のロックの歴史がレイヤーになっている。YMO結成以前から活動している70年代の友人もいれば、注目を集め出したミュージシャンもいるし。〈WORLD HAPPINESS〉は日本の音楽のあるストリーム、その幹になっていたと思うね」

ゴンドウ「今回のボックスには入っていませんが、星野(源)君とかサカナクションが参加してましたよね」

鈴木「私は基本的に洋楽しか聴かないから、〈WORLD HAPPINESS〉で新しい日本のミュージシャンをチェックしてたよ。そして同時に、同世代のミュージシャンの現在を知ったりもした」

――フェス限定で結成されたThe おそ松くんズは、世代を超えてミュージシャンが集結して圧巻でした。そこで慶一さんは、幸宏さん、大貫妙子さんと3人で“LABYRINTH”を歌われましたが、他では見られない組み合わせでした。

鈴木「おそ松くんズでは70、80年代の記憶がフラッシュバックしたよ。でも、なんでこの3人になったんだろう? その辺の事情は詳しく聞いてないけど、もしかしたらター坊(大貫妙子)が私たち2人を選んだのかもしれないね。〈誰と一緒に歌いたいですか?〉と聞かれて」

――“LABYRINTH”は大貫さんの曲ですもんね。

鈴木「〈これ歌うの?〉って驚いたよ」

――慶一さんが大貫さんと共演したのは2000年に開催されたコンサート〈Beautiful Songs〉以来だと思いますが、久しぶりの共演はいかがでした?

鈴木「とにかく、邪魔しないようにしました(笑)。ター坊のリハーサルを見てわかったんだけど、歌に対する向き合い方がすごく厳しいんだよ」

――でも、ライブは和やかな感じでしたね。慶一さんと大貫さんが手を組んで帰っていく姿も素敵でした。

鈴木「あれは出る前に舞台袖で一緒に帰ろうって決めたんだ。おそ松くんズは舞台袖で見ていて、70年代とか80年代とかいろんな時代がフラッシュバックしたな」