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初期のロキシー・ミュージックはポストパンクだったのか

以前ちょっとしたゲーム代わりに、音楽業界の友人たちに(それぞれ別のタイミングで)あえてアーティスト名を教えずに“Re-Make/Re-Model”を聴かせたことがあるのだけれど、その感想が非常に興味深かったのでここに紹介しておこう。

60代の友人A「演奏スキルとセンスがあるパンクかそれ以降のバンド」
50代の友人B「80sのUKニューウェイブだと思うが、もしかすると90sかも?」
30代の友人C「1980~2000年代のポストパンク? ポストロックやローファイっぽい気もする」

誰も正解には至らなかったのだけれど、いずれもロキシーは知っていたものの後期の洗練されたイメージが強かったためまるで結びつかなかったという。たしかに彼らほどデビュー時と解散時のサウンドが異なるバンドも珍しいのだが、それはまた別のテーマとして留保しておきたい。それよりも重要なのは、洋楽通の3人がともにこの曲を聴いて〈パンク以降のロック〉と認識したという事実だろう。

今回は“Re-Make/Re-Model”に焦点を絞って分析してみたが、『Roxy Music』には他にも、冷たくダークな電子音響が斬新な“Ladytron"や、予測不能の分裂症気味な曲展開に怯む“If There Is Something"。ディス・ヒートばりのコラージュやカットアップ的な手法が前衛的な“The Bob (Medley)"。のちにスージー&ザ・バンシーズもカバーする“Sea Breezes”など、随所にポストパンク的な意匠が散見される。

また、50sのピンナップ風写真を模した艶めかしいジャケットや、メンバーたちの常軌を逸したド派手ファッションなどビジュアルに対する徹底的な美意識も、アート志向のポストパンクやニューウェイブ勢に先鞭を付けたことはたしかだろう。

筆者が保有する『Roxy Music』アナログ盤の内ジャケット

というわけで、以上のことからロキシー・ミュージックのファーストアルバム『Roxy Music』はポストパンク(の元祖)であると勝手に結論づけたい。まあ正誤はともあれ、このアルバムに〈ロックの過去と未来〉が鮮烈に共存していることだけは間違いないのだ。

 


PROFILE: 北爪啓之
1972年生まれ。1999年にタワーレコード入社、2020年に退社するまで洋楽バイヤーとして、主にリイシューやはじっこの方のロックを担当。2016年、渋谷店内にオープンしたショップインショップ〈パイドパイパーハウス〉の立ち上げ時から運営スタッフとして従事。またbounce誌ではレビュー執筆のほか、〈ロック!年の差なんて〉〈ろっくおん!〉などの長期連載に携わった。現在は地元の群馬と東京を行ったり来たりしつつ、音楽ライターとして活動している。NHKラジオ第一「ふんわり」木曜日の構成スタッフ。