新しい発見
そのイリヤの影響や貢献は、この曲だけにとどまらず、多数の曲に及び、アルバムにユニークなカラーとフレイヴァーを付け加えている。同じく彼が共作/プロデュースに関わった“Sapphire”には、インドの音楽要素が導入されており、インド人アーティストのアリジット・シンもコライトに参加(同曲のリミックスにも参加)。アリジットの故郷などインド各地で撮影されたMVには現地の人々との素朴な交流が捉えられており、満面の笑みを浮かべて心底楽しそうなエドの姿も印象的だ。その他、“Symmetry”からはインド語のコーラスが響きわたり、アルバムのあちこちからインド楽器の音色が聴こえてくる。アルバムの制作は世界各地で行われたが、最終的に仕上げられてたのはインド西部のゴア。これまでも西洋のアーティストがインドを訪れ、スピリチュアルな世界に開眼するケースは少なくなかったが、そういうのとも少し違うようだし、音楽的な方向性で煮詰まったから異国の音楽を取り入れた、というのとも違っている。純粋に新しい発見にときめき、人生を謳歌している、といった無邪気なニュアンスが圧倒的だ。
もちろんエドらしいバラードも多数収録されている。シンプルな演奏をバックに素朴なメロディーで綴られる“Old Phone”や“In Other Words”、さらに“Slowly”“Vow”“For Always”……などなど、聴くたびに愛着が湧きそうなナンバーも多く、センティメンタルなエドも健在だ。そうした楽曲は歌とギターとループだけでストリートに立っていた、ワンマン・バンドのような彼の出発点を今一度思い出させてくれる。とは言え、アルバムには多数の共作者やプロデューサー、ミュージシャンが関わっている。
前述のイリヤを筆頭に、以前からエドとは深い関係にあるスノウ・パトロールのジョニー・マクデイド(ピンク、ロビー・ウィリアムス他)をはじめ、グレイシー・エイブラムスやオマー・アポロらを手掛けるブレイク・スラットキン、エイバ・マックスからレディー・ガガまでを手掛けるサーカット、SZAやmgkを手掛けるオマー・フェディ、アリアナ・グランドやワン・ダイレクションとの仕事で知られたサヴァン・コテチャ、あちこちに出没していまやもっとも熱い存在のフレッド・アゲインなど、ポップ・シーンのトップ・クリエイター陣がしっかり脇を固めている。