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ジャンルを横断する現在

 一方でニーヨ自身も後進たちの手本となった。“So Sick”を歌った動画でデビューのきっかけを掴んだジャスティン・ビーバー、ブレイク前のニーヨとスタジオで過ごすなかで彼からソングライティングの術を学んだブルーノ・マーズ。後にポップ・アイコンとなった彼らもニーヨの影響下にある。日本のアーティストとも交流し、Full Of Harmonyのシングルをプロデュースし、Utada(宇多田ヒカル)とデュエットもした。

 4枚のアルバムを出したデフ・ジャムを離れた後、2012年にはモータウンに移籍。自身のコンパウンド・エンタテインメントは続行させながら、モータウンではシニア・ヴァイス・プレジデントの要職に就き、A&Rとしてアーティストの発掘も行い、UKのソンナ・レレなどをサポートした。また、映画やTVドラマ/番組への出演を含めて活動の幅を広げ、この頃からは音楽性にも変化が表れはじめる。特に2008年の“Closer”で試みていたユーロ・ポップ〜EDM的なアプローチが、アフロジャックと共に客演したピットブル“Give Me Everything”(2011年)の大ヒットを機に本格化。翌年にヒットしたデヴィッド・ゲッタ“Play Hard”やカルヴィン・ハリス“Let’s Go”への客演もあって、2012年作『R.E.D.』や2015年作『Non-Fiction』でも、R&Bへの回帰を謳いながらEDM的なダンス・ミュージックの要素が強まった。同時にラッパーを中心としたコラボも増え、以降、客演も含めてジャンルを横断した活動が盛んになっていく。2018年作『Good Man』も、ディアンジェロの名曲を使ったオーセンティックなR&Bからステフロン・ドンらを迎えたダンスホールまで、当時の客演仕事を反映したような全方位な内容となっていた。

 2019年に初のホリデイ・アルバム『Another Kind Of Christmas』を出してからも新曲のリリースや客演は続いていく。コロナ禍や人種差別問題などで世界が不穏な空気に包まれるなか、プライヴェートではアップダウンもあったが、私生活を歌詞に反映してきた彼にとっては、それも格好のテーマになった。OT・ジェナシスを招いて2020年に発表したトラップ調の“Pinky Ring“は夫人のクリスタル・ウィリアムとの離婚について歌った曲だ。が、クリスタルとはこの後復縁し、2021年6月には夫人との間に3人目となる子どもが誕生している。そんな人生の苦楽を40代になったひとりの人間として内省を込めて歌ったのが、2022年作の『Self Explanatory』。先行シングルはレトロ・フューチャーの制作でジェレマイが客演した80s R&Bネタのミッド・グルーヴ“U 2 Luv”で、内省的なアルバムとはいえ、複数の作家たちとソングライター・キャンプ的なことも試みながら作ったという同作からは新しい世界に飛び込んでいくチャレンジ精神が感じられた。

 現在の彼はモータウンを離れてインディペンデントで活動中。環境は変われど異ジャンル交流を行いながら共演や客演を重ね、2024年には“Give Me Everything”の再来を謳ったアフロジャックやピットブルたちとのパーティー・チューン“2 The Moon”も発表。直近では、H・マニーが手掛けたロティミとのバラード“Sweet Gurl”でも変わらぬ甘い声を聴かせていた。夫人のクリスタルとは2023年に離婚したが、現在はクリスタルとの子を含む7人の子どもたちと生活しながら4人の女性と平等に付き合う〈ポリアモリー〉な関係をオープンにしている。私生活を曲に反映させるニーヨのことだ。次のアルバムでは、機知に富んだリリックとキャッチーなメロディーで、いままでにない新しい恋模様が描かれるのかもしれない。 *林 剛

ニーヨ初期の仕事を含む作品。
左から、ヤングスタウンの99年作『Let’s Roll』(Hollywood)、アウトロウズの2001年作『Novakane』(eOne)、ニヴェアの2002年作『Nivea』(Jive)、ティードラ・モーゼスの2004年作『Complex Simplicity』(TVT)

ニーヨの客演作品を一部紹介。
左から、カニエ・ウェストの2007年作『Graduation』(Roc-A-Fella/Def Jam)、プライズの2008年作『Definition Of Real』(Slip-N-Slide/Atlantic)、50セントの2009年作『Before I Self Destruct』(Shady/Aftermath/Interscope)、デヴィッド・ゲッタの2009年作『One Love』(EMI)、マイケル・ボルトンの2009年作『One World One Love』(Universal)、カルヴィン・ハリスの2012年作『18 Months』(Columbia)、ティム・マグロウの2012年作『Emotional Traffic』(Curb)、フレンチ・モンタナの2013年作『Excuse My French』(Bad Boy/Interscope)、ヨー・ゴッティの2013年作『I Am』(Epic)、2015年のコンピ『We Love Disney』(Verve)、2018年のサントラ『Motown Magic』(Motown)、アーミン・ヴァン・ビューレンの2019年作『Balance』(Armada)、ギャング・スターの2019年作『One Of The Best Yet』(Gang Starr)、ジーズィの2020年作『The Recession 2』(Def Jam)、ヤング・ブルーの2022年作『Tantra』(Empire)