〈ケルティック・クリスマス 2025〉の妖精

 ソロ・シンガーとしても活躍するホットハウス・フラワーズのリアム・オ・メンリィは7月にフジロックのステージに立ったばかりだが、この年末にはシャロン・シャノンやポール・ブレイディも参加する〈ケルティック・クリスマス2025〉で再び日本にやって来る。しかも17年ぶりの3rdソロ・アルバム『PRAYER』をひっさげて。

LIAM Ó MAONLAÍ 『PRAYER』 PLANKTON(2025)

 チェコの女性シンガーやフランスのサックス奏者、日本の笙奏者などが参加し、7曲の伝承曲と4曲のオリジナル曲から成るこの新作は2019年から今年にかけて東京とダブリンで断続的に録音され、共同プロデューサーとして日本人エンジニア岩名路彦の名もクレジットされている。「2018年の来日時、僕の熱心なファンだという路彦から何か一緒に録音しようと提案され、翌年からプロジェクトが始まった」という。

 ソロでもホットハウスでもセットリストを決めずにライヴ・ステージに上がることで知られるリアムは、この新作でも「細かいプランなど立てずにスタジオで自由に録音を続け、それが結果的にアルバムになった」のだという。前作『To Be Touched(リアムの魂)』(2008年)リリース時の取材で語った「何の準備もせず、下りてくるメロディをそのまま録音した。曲が生まれる瞬間をリスナーに受け取ってもらうことが一番の目的だったから」というスタンスは今作でも変わらない。「その瞬間ごとの場のエネルギーを感じて動くのが自分のやり方だし。ボクサーがリングに上がる前に、こうしようああしようと動きを決めていたら絶対に負けるわけで。その時にどう感じ、どう動くかだ。自分にとって歌うこと、音楽をやることは、ストーリーテラーが毎回違う物語を語るのと同じなんだ」。その瞬間ごとのインスピレイション、場のエネルギーを生の歌としてスポンテイニアスに表現し、リスナーと共有、コミュニケイトすることだけを目指す頑固な現場主義者。だからこそ、U2のボノからも「世界一のホワイト・ソウル・シンガー」と評されてきたのだ。

 なお今回リアムは〈ケルクリ〉への参加以外に〈~螺旋の渦~「青柳」〉なる特別公演もおこなうことになっている。第1部では、アイリッシュ・ダンサーの他タブラのユザーンやモダン・ダンスのOBAと共演し、第2部では小泉八雲「青柳」をモティーフに能鼓の佃良太郎とアイルランド × 日本のアニミズム的自然賛歌を綴るという内容らしいが……結果は誰にも(本人にも)わからない。すべては彼のソウルのおもむくままだが、スリリングな展開になることだけは間違いない。

 


LIVE INFORMATION
ケルティック・クリスマス2025

2025年11月29日(土)福井・ハーモニーホールふくい
開場/開演:15:15/16:00

2025年11月30日(日)愛知・東海市芸術劇場
開場/開演:15:15/16:00

2025年12月3日(水)兵庫・兵庫県立芸術文化センター
開場/開演:18:15/19:00

2025年12月6日(土)東京・すみだトリフォニーホール 大ホール
開場/開演:16:30/17:15

2025年12月7日(日)埼玉・所沢市民文化センター ミューズ
開場/開演:14:30(ロビー開場:12:45)/15:00

公演サイト:https://www.plankton.co.jp/xmas25/

リアム・オ・メンリィ特別公演 ~螺旋の渦~「青柳」
2025年12月5日(金)草月ホール
開場/開演:18:15/19:00

■出演
リアム・オ・メンリィ(ヴォーカル、ピアノ、ボーラン)
OBA(ダンス)
ザ・ステップクルー・トップ3 with ダン・ステイシー
 キャラ・バトラー(ダンス)
 ジョン・ピラツキ(ダンス、フィドル)
 ネイサン・ピラツキ(ダンス)
 ダン・ステイシー(ダンス、フィドル)
ユザーン(タブラ)
佃良太郎(大鼓)

公演サイト:https://plankton.co.jp/liam/2025.html