前代未聞の新しすぎた音楽
2曲目“Babe I’m Gonna Leave You”は一転してフォークソングのカバーで、アコースティックギターと歌だけの世界にバンドの激しい演奏が勢いよく挿入される、静と動のコントラストが鮮烈な構成。このフォークとハードロックの融合・共存は、のちの代表曲“Stairway To Heaven”などでも展開されるようにZEPがZEPたる理由の一つだろう。6曲目“Black Mountain Side”も直球のフォークソング(インスト)にタブラを加えたもので、『Led Zeppelin III』で特に大きくフィーチャーされるフォーク要素はすでにここにある(そのため、ジミー・ペイジのルーツの一つであるフォークについて映画で掘り下げられていなかったのは少々残念だった)。
3曲目“You Shook Me”と8曲目“I Can’t Quit You Baby”はブルースで、これまた彼らのルーツの一つが大々的に展開されている。しかしボンゾの重たいビートとジミー・ペイジのヘビーでサイケデリックなプレイは、単なるブリティッシュブルースロックから大きくはみ出している。素朴さや土着性が一切ないのだ。“Your Time Is Gonna Come”では教会にルーツがあるジョンジーがハモンドオルガンをガッツリ弾いており、厳かで神聖でスケールの大きな世界を現出させる。ジョンジーが鍵盤を操れることも、まちがいなく彼らの強みだ。こういったフォークやブルースなどのルーツミュージックに根差しつつ、カバー曲も演奏しながら、そこからどうしても逸脱してしまう固有性こそが、ZEPが唯一無二のバンドであることを物語っている。
ZEPらしさということでいえば、やはり、ライブで長尺演奏されたことでもおなじみの“Dazed And Confused”が本作の白眉だ。テンポを速めたり遅くしたりと波の満ち引きのようなドラマを築き上げ、静と動を行き来する緩急自在な展開。そしてジミー・ペイジのボウイング奏法による幻想的なサウンドは、いまもって革命的かつ新鮮でありつづけている。また歌も演奏もそれぞれが呼応し対話しあうパフォーマンスは、ZEPというバンドが替えの利かない存在であることを証明している。アルバムを締め括る“How Many More Times”も、ブルースを基盤にしている部分があるものの、次々と展開していく組曲的な構成はプログレッシブで起伏が激しく、ジャンル分けは不能。
本作は、メンバーが一体になったケミストリーとジャンルの混交が生み出した、強烈なデビュー作だ。とにかく当時はまったくもって新しいロック、ひいては新しい音楽だったことはまちがいない。こんな作品が1969年にリリースされていたなんて……と2025年のいま感じ入るが、当時の聴き手の衝撃はどれほどのものだっただろうか? 米ローリング・ストーンなどメディアや評論家からは酷評を受けたというが、それも新しすぎたがゆえだろう。しかし、リスナーはこの新しすぎる音楽に夢中になった。誰が正しかったのかは、すでに歴史が証明済みだ。
MOVIE INFORMATION
レッド・ツェッペリン:ビカミング
監督・脚本:バーナード・マクマホン(「アメリカン・エピック」) 共同脚本:アリソン・マクガーティ 撮影:バーン・モーエン 編集:ダン・ギトリン
ジミー・ペイジ ジョン・ポール・ジョーンズ ジョン・ボーナム ロバート・プラント
2025年/イギリス・アメリカ/英語/ビスタ/5.1ch/122分/日本語字幕:川田菜保子/字幕監修:山崎洋一郎/原題:BECOMING LED ZEPPELIN/配給:ポニーキャニオン 提供:東北新社/ポニーキャニオン
TOHOシネマズ 日比谷ほか全国の劇場及びIMAX®劇場にて大ヒット公開中
©2025 PARADISE PICTURES LTD.
[公式HP]https://ZEP-movie.com/
[公式X]@zepmovie