砂原良徳 × LEO今井 × 白根賢一 × 永井聖一――各人の音楽要素が融合を進めたニュー・アルバム『ALL HAZE』には進化したバンドの現在が浮かんでいる!
流れが感じられるアルバム
「最初のデモはシンセのリフみたいなのがなく、ビートとベースのリズムだけで、80年代初期のプリンスっぽいトラックだなと思って……砂原(良徳、シンセサイザー)さんは全然意図してないって言ってたけど。で、どんどん音が足されて、ヴォーカルとか入れはじめたら、なんかすごくハードなYMOみたいに聴こえるなあって」(LEO今井、ヴォーカル)。
これはニュー・アルバムに先駆けて配信リリースされた曲“Vapour Cream”の制作エピソードだが、そもそも高橋幸宏のアイデアから始まったユニット=METAFIVEから発展したバンドであるだけに、TESTSETには何かしら〈YMO〉というキーワードが、まぁ、そこかしこに現れがちである。がしかし、彼らがYMOの遺伝子を継承するバンドかと言うと、まったくもって間違いではないけれど、思いっきりストレートにそう言えるようなものではない。エレクトロニックなビートをサウンドの軸としながらも、本格的始動から3年余りの間に、砂原と今井、永井聖一(ギター)、白根賢一(ドラムス)の4人は、YMOはおろか他の何者とも比べようのない音楽性を提示し、メンバーそれぞれの活動がありながらも、バンドとしての有機的な結びつきを強めてきた。リスナーのハートにはそのオリジナリティーとパッションはしっかりと届いていることだろうから……というところでの2年3か月ぶりのニュー・アルバム『ALL HAZE』到着である。一昨年の初作『1STSET』は、その時点で鳴らしているバンドの音をとにかくギュッと詰め込んだ熱気にまずは惹きつけられるアルバムだったが、今作は全編を通してハッキリと流れが感じられる、いわゆる〈アルバムらしいアルバム〉という印象だ。
「まず、今回は曲をより厳選したっていうのがありますね。ファーストの時は外したのが1、2曲だったのが、今回は6、7曲ぐらい収録しなかった曲があって、それぐらい多く曲を作ってましたから。それに、たくさんやってるわけではないけれど、ライヴの経験を経て、砂原さんのミックスも〈ライヴ会場で鳴ってるTESTSET〉というところからインスピレーションを得て、それが今回の音に出てると思います。もうちょっとこう、ハイが際立った感じの鳴り方になっていて、それがバンド感の強い聴こえ方に繋がったのかもしれない」(今井)。
