10代の頃からの夢だったピアノによるシャンソン・アルバム!
さまざまな歌手を迎えて録音したバルバラへのトリビュート、サビーヌ・ドゥヴィエルとのフランス歌曲集など、ピアニストでありながら〈歌〉のアルバムを折に触れてリリースしてきたアレクサンドル・タロー。そんな彼が「10代の頃からずっと作りたいと思っていた」というシャンソン・アルバム『ピアノソング』が完成した。タローがピアノでシャンソンを〈歌う〉アルバムである。
「ピアニストの人生において、生まれてから死ぬまで、歌はピアニストと共にあります。子ども時代のレッスンで、ピアノの先生は最初から最後までずっと歌っていたでしょう。僕は今でも舞台に立ったとき、弾きながら歌っている自分に気がついてびっくりします。いつも自分が歌い手のつもりでいるわけです。
でも同時に、人間の声からはとても遠いところにあるのがピアノという楽器です。木と金属でできた精密な機械、あるいは小さな工場のような楽器が、人間の声を素晴らしく模倣することができるのは、ひとつの奇跡だと思います」
オーケストラやピアノ・ソロのためにアレンジされたシャンソンは、〈クラシック音楽によって再構築〉されているようにも聞こえる。
「クラシックとシャンソンは、互いにインスパイアし合う存在でした。たとえばクラシックの名ピアニストとして知られるアレクシス・ワイセンベルクは、〈Mr. Nobody〉という名前でシャルル・トレネのシャンソンを編曲したアルバムを出していました。逆にシャンソン歌手として知られるレオ・フェレは、クラシックの作曲法を学んだ作曲家でもあります。このアルバムには、そんなクラシックとシャンソンがクロスした地点にいるソングライターの作品がたくさん収録されていますが、なかでも素晴らしいのは、やはりバルバラですね。彼女は歌手であり、作曲家であり、詩人でした。楽譜が読めないのに、あれだけ知的な音楽を作曲することができるなんて。私にとって至高の存在です」
これまでも世界各地のコンサートで、アンコール・ピースとしてシャンソンを演奏してきたというタロー。それによって客席との距離感も変わってきたという。
「最近では即興もしますし、お客さんの反応も違いますね。シャンソンの歌手はどうしてもフランス語圏に活動が限られてしまいがちですが、僕はこうやって毎年のように日本に来て、ピアノでシャンソンを弾くことができる。言葉が不在だからこそ、バリアなしにいろいろな人に聴いてもらえるのはうれしいことです」
