アレクサンドル・タローが奏でるラヴェルのピアノ協奏曲が遂に登場
美しい音色と精緻なピアニズム、革新的なアイディアによるプログラミングによって人気を集めるピアニストのアレクサンドル・タロー。20年前にはラヴェルのピアノ独奏曲全曲録音を行い話題となったが、今回はラヴェルの2つのピアノ協奏曲とさらにファリャの“スペインの庭の夜”をリリースした。
「独奏曲の録音が完了した時点で協奏曲も録音したいと思っていましたが、プロジェクトとして大きなものですし、最高の共演者、環境で……とこだわった結果、なかなか実現に至らなかったのです。しかし今回、指揮者、オーケストラ、さらにアーティスティック・ディレクター、すべて納得のいく形で録ることができました」
今回、ラヴェルと共に並べられたのはファリャだが、これにはどんな意図があったのだろうか。
「ラヴェルの作品があまりにも完成度の高いものなので、それにふさわしいものを選ぶのは非常に苦労しました。ほぼ同時代を生きたファリャはラヴェルと親しく、お互いに影響を与え合った作曲家です。またオーケストレーションが素晴らしく、両者には共通する要素もあり、一つの世界観が構築できると思いました」
いずれの作品もピアノとオーケストラのやりとりが緻密であり、独奏者、指揮者、オーケストラ同士の信頼関係がないと成り立たないものだが、とても親密であたたかい音楽づくりが成されている。
「指揮のルイ・ラングレーさんは演奏者を非常に尊重してくれる方で、とてもいいディスカッションをしながら演奏することができました。録音は数日間共同作業を行うので、このような関係性はとても重要です。CDを通しても演奏者の空気感というのはお聴きくださる方に通じるものですからね」
いずれはラヴェル室内楽作品も録音したいと語ってくれているタローだが、彼はこの作曲家をどのように感じているのだろう。
「演奏者の魅力を最大限に引き出し、聴き手に愛してもらえるような音楽を書いてくれた人ですね。常に感動を与えてくれる作曲家だと思います」
ラヴェルを愛するピアニストであるタローは、2024年4月公開予定(日本の配給・公開は現在未詳)のラヴェルの伝記映画「ボレロ」に出演する。
「主人公のラヴェルが演奏シーンでの〈手〉、そしてラヴェルを徹底的に批判する音楽評論家を演じ、音楽も担当しています。とても感動的なラストで、素晴らしい映画になっています」