『Protest Songs』(1989年)
今回改めて聴き直したことで、僕はどうやらこの4作目のアルバムに対する評価を改めなければならないようだ。本作はいわく付きで、当初は『Steve McQueen』のリリース直後に同作の豪奢な音作りとは対を成すシンプルな作品として制作されたが、メーカーの意向により4年近くもお蔵入りしていたのだ。そのためどうにもネガティブな印象が拭えなかったのだが、それはとんだ誤解だった。
過度なプロダクションをあえて排した素朴なサウンドの本作は、それゆえ80sだ90sだとかいう時代の呪縛から最も解放されているように感じられるのだ。プリファブの音楽は総じて同時代性は薄いとはいえ、それでもここに収められた楽曲たちのエバーグリーンな佇まいは図抜けている。
また、簡素なアレンジによって歌とメロディが前景化したことで、パディの優れたソングライティングをよりダイレクトに体感できるのも本作ならではだろう。“Life Of Surprises”や“Diana”も捨て難いが、彼が1人でギターを弾き語る“Dublin”の生々しい響きが何よりも心に刺さる。
『Jordan: The Comeback』(1990年)
アルバム単位でいえば間違いなくプリファブの最高傑作だと思っているのだが、その理由を問われるとやや答えに窮する自分もまたいるのである。
全19曲64分というボリュームもさることながら、大きく4つのパートに分かれた構成。しかも音楽性もいつにも増して幅広く、サンバにソウル、ロックンロール、ゴスペルから、ボレロやマーチのリズムまで果敢に取り入れている。ようするにどう考えても1枚のアルバムにまとまりそうもない楽曲たちが、奇跡のようなバランスで違和感なく収められているのだ。みたびプロデュースを務めたトーマスの助力も大きいのはたしかだが、それだけでは説明の付かないサムシングがこの名盤にはあるように思える。
また楽曲のクオリティも押しなべて高いのだが、じつはさほど突出したナンバーがあるわけではない。高いアベレージを保ちながらどの曲もあくまでアルバム全体の1つのパーツとして機能している、そんな感じなのだ。
うーん、やはり本作の類まれな独自性を上手く説明できたとは到底思わないのだが、だからこそ僕はその答えを求めてこれから先もずっとこのアルバムを聴き続けるに違いない。
『Andromeda Heights』(1997年)
前作から7年という長い空白を経てのリリースとなった6作目にして、ため息が出るほどのロマンティシズム溢れるアルバム――なんて書くと笑われるかもしれないが、実際にそうなのだから仕方がない。
1992年にドラマーのニール・コンティが脱退したため3人体制で臨んでいることに加え、パディの良き理解者であったトーマス・ドルビーの手を離れてのセルフプロデュースという環境的な変化はあるが、サウンドはしっかりと『Jordan: The Comeback』の香気を引き継いでいる。
シングルカットされた“A Prisoner Of The Past”をはじめ、それぞれの楽曲がより輪郭を際立たせているにも拘わらず、音色はかつてないほどまろやかで柔らかい。それをバンドの成熟と捉えるならば、本作はプリファブが初めて到達した〈大人のポップアルバム〉だといえるだろう。
それにしてもここに収められた楽曲たちはどれもがまるで星くずのように美しく、そして儚い。よってレコメンドトラックなど選びようがないのである。


