
やり方は任せます
――yumaさんの肩書きは音楽監督です。この曲はこの人にアレンジをお願いするとか、どういう編成でどういうプレイヤーを揃えるとか、そういうことを担当された?
「そうですね。アレンジャーの作家性を信頼して頼んでいたので、〈こういうふうにアレンジして〉って細かく言った曲は1曲もないかもしれないです。北村蕗さんにお願いした“最後の闘い”だったら、〈アヴァンギャルドにしちゃってください、でもやり方は任せます〉という感じでした。このアレンジャーはこういう曲が得意じゃないかなっていうことを担当と想像しながら決めたものもあるし、この人はもうこの曲だなという強いイメージがあったケースもあります」
――例えば?
「特にヴォーカリストはそれが顕著でしたね。例えば“破滅への使者”のラヌさん。彼女にはこの曲をやってほしかったんですよね。このアルバムってインストの曲のメロディーをヴォーカルでなぞるという形だから、曲によっては歌うのが難しいと思うんです。高井息吹さんが歌った“ハンターチャンス”も彼女だからできた部分が大きい。そういうふうに、この人だったらここにフィットするなというイメージがありました。あと、“永遠の豊穣”のハーモニーはヴォーカリストのmimikoさんがすべて自分で付けてくれたのですが、それも素晴らしくて。彼女は日本人とアメリカ人のミックスで英語がネイティヴなので、日本人の歌う造語とはやっぱり雰囲気が違っていておもしろかったです」

――“独りじゃない”は、馬場智章さんの無伴奏サックス・ソロですね。これには驚きました。
「こんなふうにソロだけでこの曲を成り立たせられるサックス奏者って、なかなかいないと思うんですよ。僕は正直、最初はサックスのオーヴァーダビングで作っていくのがおもしろいんじゃないのかなと思っていたんです。だけど、吉川さんが、サックス・ソロがいいんじゃないか?って助言してくださって。これはジャズの企画なんだし、馬場さんはソロに耐えうる実力があるので、もうサックス1本で行った方がいいんじゃないの?って。その一言をもらって、ソロでいく決断ができましたね」
――yumaさんはCMの音楽とかドラマや映画の劇伴の仕事をたくさんされていますよね。 劇伴って何かのための音楽じゃないですか。でも、今回のアルバムってゲームのための音楽だったものを、いろいろな方がアレンジした。だから、いつもやってる仕事とちょっと勝手が違いますよね?
「そうなんです。そういう意味での制約っていうのは、劇伴とかコマーシャルの仕事よりは少なかったので、かなり自由度は高かったですね。だから、みなさんの力を借りて自分のやりたかったことがいつも以上に実現できたかもしれないです。僕は小さいときからずっとクラシックをやっていて、大学に入ってからジャズを勉強したんです。一方、高校生ぐらいからずっとハウスがすごく好きで、デビューしたのもイタリアのイルマっていうダンス・ミュージックのレーベルからだったんですよ。自分の音楽性はクラシックとジャズとダンス・ミュージックの要素が3分の1ずつぐらいあるというイメージ。今回、ジャズ・アルバムとは銘打っているけど、その意味では自分のこれまでの経験も活きているなと思いますね」 *土佐有明
yuma yamaguchiの作品を一部紹介。
左から、2025年のサントラ『日本一の最低男※私の家族はニセモノだった』(ポニーキャニオン)、2021年作『NotAnArtist』(YUGE inc.)