That’s What I Like!
ロマンティックが止まらない! 究極の9曲を収めた今年最大の話題作『The Romantic』は、ラテン音楽の哀愁と情熱と愛を導入してブルーノ・マーズという超絶スターの根本的な魅力を親しみやすく気軽に伝える充実の名曲集だ!

明快なポップスに仕上げるセンスに今回も脱帽

BRUNO MARS 『The Romantic』 Atlantic/ワーナー(2026)

 ピーター・ジーン・ヘルナンデスという本名が似合うアルバムだ。9年半ぶりの新作『The Romantic』は、先行シングル“I Just Might”と共に公開されたチカーノ・ソウル風情のジャケットが匂わせていた通りラテン音楽にアプローチしている。ルイス・ミゲルに通じる甘いメキシカン・ボレロで開幕し、コンガやティンバレスなどが小気味よく響く全9曲。Dマイルとの共同制作で、ラテンにソウルやオールディーズの懐かしい成分を交えてブルーノ流の明快なポップスに仕上げたセンスに今回も脱帽だ。

 シルク・ソニックの流れを汲むバラードを含め着想源を探したくなる欲求にも駆られる。“God Was Showing Off”はチカーノ・ソウルの古典でもあるイントゥルーダーズ“Together”のティエラ版を思わせるし、ジュヴィナイル名曲のリリックを引用した“Cha Cha Cha”はオージェイズ“Back Stabbers”を連想させる。これらを含む6曲のストリングスをシルク・ソニックに続いて元MFSBのラリー・ゴールドが手掛け、アルバムのロマンティックなムードに貢献。“Something Serious”はまさにチャチャチャの名曲として知られる“Oye Como Va”のサンタナ版に通じるラテン・ロック調で、グルーヴィーに疾走する“On My Soul”はアイズレー・ブラザーズ風のギター・ファンクとくる。が、どの例えも正解とならないのがブルーノらしさたる所以。単純に楽しい。 *林 剛

 

欲張りすぎない度胸と大衆性

 彼のルーツにドゥワップがあることを思えばもっとアーリー・ソウル〜オールディーズ的な方面を強調してスウィートなローライダー・ソウルが追求されるのかとも思っていたのだが、ルーツから取り出してきたのは普通にサンタナやアイズレーだったとでもいうか、蓋を開ければ予想以上にオーセンティックなラテン音楽の要素が明快に表現されているという印象のニュー・アルバム『The Romantic』。すでに世界中で大ヒットを記録し、“I Just Might”に続くセカンド・シングル“Risk It All”も成功を収めているわけだが、この9曲入り31分のコンパクトな作品はいろんな意味で欲張りすぎないブルーノ・マーズというアーティストの度胸を示しているように思う。

 シルク・ソニックでもガッチリ組んだDマイルが共同プロデュースを務め、スミージントンズ期からの盟友フィリップ・ローレンスやブロディ・ブラウンといった共作陣も変わらず参加。噂されていたアンドリュー・ワットらの参加もなく、ゲストをフィーチャーすることもない。ヴィジュアル面からコンセプチュアルな統一感を持たせつつもコスプレにならない絶妙なアプローチで、トレンドに寄せていくことも新しさを誇ることもなく、鼻につかない振り幅と良い意味のベタさを備えた楽曲を甘く切なく小気味良く極めてポップに聴かせるだけの素晴らしさ。ここまでの存在になれば大作主義に陥ってしまいそうなものだが、今回もどこかで流れていて自然と耳に入ってきて聴き流してしまっても大丈夫なくらいの広がりを持った、気負いのない大衆性を備えた一枚。最高。 *轟ひろみ