真骨頂を開示するプロコフィエフ“戦争ソナタ”が最大の聴きもの
“高雅で感傷的なワルツ”は、ラヴェルがお得意の手練手管で〈ワルツ〉を料理した、7つのワルツとエピローグからなる逸品。トルプチェスキはすでにロンドンのウィグモア・ホールでの演奏をライブ録音しており(2014年)、彼らしい明瞭なタッチと音の質感の中に作品のもつ空気感を雰囲気豊かに吹き込んでいる。約10年を経ての今回のリサイタルでは、作品の本質から汲み取るニュアンスの表出がさらに深められていることだろう。
メインはプロコフィエフの“ピアノ・ソナタ第7番”だ。第2次世界大戦中に書かれたため、第6番、第8番と共に〈戦争ソナタ〉と括られることが多い。特にこの第7番は音楽的円熟を極めた傑作で、1943年の初演はリヒテルが務めた。ピアノという楽器の機能性を極限まで追求したプロコフィエフの筆致への対峙は、まさにトルプチェスキの真骨頂を聴衆に開示する当夜最大の聴きもの。終楽章大詰めの鬼気迫る激しい打鍵を全身で浴びていただきたい。彼の芸術的本髄というべきロシアピアニズムの伝統の発露が、圧倒的な技巧とスリリングなまでのアプローチで体験できる。
これまでの日本での演奏会ではピアノ協奏曲での登壇だったが、トルプチェスキが今回臨むソロリサイタルはまさに満を持したといえる腰を据えた濃密なプログラム。そこからは、彼の音楽的履歴の一端を今後の展望をも含みつつ日本の聴衆と共有し、現在の音楽表現の一切をじっくりと味わって欲しいという、すぐれた音楽家の真摯な願いがひしひしと伝わってくる。完成された技巧を備え、端麗でありながらも情感豊かな音楽を創出するヴィルトゥオーゾ。どのような道をたどり驚くべき到達点へと深化していくのか、聴衆にとって新たな出会いに目を啓かされる一夜となるはずだ。
LIVE INFORMATION
珠玉のリサイタル&室内楽
シモン・トルプチェスキ ピアノ・リサイタル
2026年9月5日(土)東京・銀座 ヤマハホール
開場/開演:18:30/19:00
会場:ヤマハホール
出演者:シモン・トルプチェスキ(ピアノ)
料金(税込):6,000円(全席指定)
主催:ヤマハ株式会社ヤマハホール
■注意事項
・都合により出演者、曲目が変更になる場合がございます。あらかじめご了承ください。
・未就学児のご入場はご遠慮いただいております。
・チケット料金には消費税が含まれております。
■プログラム
L. v. ベートーヴェン/ヴラニツキーのバレエ「森のおとめ」のロシア舞曲の主題による12の変奏曲 イ長調 WoO. 71
P. I. チャイコフスキー/四季―12の性格的描写 Op. 37bis より 10月「秋の歌」
ドゥムカ―ロシアの農村風景 ハ短調 Op. 59
L. v. ベートーヴェン/創作主題による32の変奏曲 ハ短調 WoO. 80
M. ラヴェル/高雅で感傷的なワルツ
S. プロコフィエフ/ピアノ・ソナタ 第7番 変ロ長調 Op. 83
■チケット情報
チケットぴあでのご予約・お申し込み
WEBからのお申し込み:http://ticket-search.pia.jp/pia/search_all.do?kw=323-059 ※座席選択可能
Pコード:323-059
発売日:2026年3月21日(土)
座席種別:指定席
■お問い合わせ
ヤマハ銀座店
TEL:03-3572-3171(ヤマハ銀座店 インフォメーション)
営業時間:11:00~18:30
定休日:毎週火曜日(祝日の場合は営業いたします) ※2026年3月30日(月)は臨時休業いたします
住所:〒104-0061 東京都中央区銀座7-9-14
アクセス:https://retailing.jp.yamaha.com/shop/ginza.html#access
PROFILE: SIMON TRPČESKI
シモン・トルプチェスキは圧倒的な技巧と深い表現力、そして舞台上でのカリスマ性溢れる存在感で20年以上にわたり世界の聴衆を魅了し続けている。BBCニュー・ジェネレーション・アーティストとして国際的な活動をスタートさせた。これまでにロンドン響、フィルハーモニア管、フランス国立管、ロイヤル・コンセルトヘボウ管、チューリッヒ・トーンハレ管、ロイヤル・ストックホルム・フィルハーモニー管、ベルリン・ドイツ響、NDRエルプフィルハーモニー管、ロサンゼルス・フィル、ニューヨーク・フィル、シカゴ響、サンフランシスコ響など世界屈指のオーケストラと共演してきた。2025~2026シーズンは、ヴィヨーム指揮プラハ・フィルハーモニア管のシーズン開幕公演をはじめ、ノセダ指揮ワシントン・ナショナル響との北米ツアー、ペトレンコ指揮ロイヤル・フィルとのスペインツアー、ジョルダン指揮チューリッヒ・トーンハレ管および香港フィル、コチャノフスキー指揮モンテカルロ・フィル、インバル指揮シンガポール響などとの共演が続く。さらにホーネック指揮サンタ・チェチーリア管、ペトレンコ指揮イスラエル・フィルへのデビューやウィグモアホール、アムステルダム・コンセルトヘボウでのリサイタルなどが予定されている。録音では、ペトレンコ指揮ロイヤル・リヴァプール・フィルとのラフマニノフ、チャイコフスキー、およびプロコフィエフの協奏曲全集、マチェラルの指揮によるショスタコーヴィチとブラームス協奏曲集のほか、ロシアものからバッハ、ショパン、ドビュッシーまで幅広いレパートリーで高い評価を得ている。2023~2024年シーズンにレジデントピアニストをつとめたロイヤル・スコティッシュ・ナショナル管とはサン=サーンスのピアノ協奏曲第2番と第5番を録音、2026年春のリリースを予定している。最新盤『モーツァルト、ベートーヴェン、ブラームス:変奏曲集』は英国「グラモフォン」誌のエディターズチョイス、フランス「Choc De Classica」誌の〈Choc De Classica〉などを受賞、批評家から高い評価を得た。故郷マケドニアの文化普及にも積極的に取り組み、伝統音楽を現代的に再創造する室内楽プロジェクト〈マケドニッシモ〉を立ち上げ、世界各地で公演を行っている。2009年、マケドニア大統領功労勲章受章。2011年、同国初の国家芸術家に選出された。2025~2026年シーズンにはデビュー25周年を迎えた。