幼少期からピアノに親しみ、名だたるオーケストラや指揮者・音楽家と共演、数々の受賞歴を持つ、2001年生まれの若きホープ=ジョージ・ハリオノ。彼が、2024年11月16日(土)に東京・銀座ヤマハホールで一夜限りの特別なコンサートを行う。自動演奏機能付きピアノ〈Disklavier(ディスクラビア)™〉を演奏し、故郷・英国にもリアルタイムで生配信するというこの公演。コンサートやプログラムの聴きどころとは? そしてジョージ・ハリオノとはどんな演奏家なのか? 音楽ジャーナリストの伊熊よし子に解説してもらった。 *Mikiki編集部


 

音楽は生きる糧、ピアノはよき相棒

2023年11月11日にヤマハホールで行われたジョージ・ハリオノのリサイタルは、〈若きエンターテイナー〉の様相を強く打ち出すものだった。ベートーヴェン、チャイコフスキー、リスト、シューベルト、ストラヴィンスキーの作品が演奏され、力強さと舞曲のリズムが際立ち、いずれも手の内に入った自信あふれる演奏。印象的なのは、ハリオノの友人だというミハイル・アルカディエフ(1958~)の“フレイム・ソナタ”(日本初演)が登場したこと。和音が美しく弱奏と強奏のバランスを考慮した演奏で、曲の神髄に迫った。

イギリス出身の若きピアニスト、ジョージ・ハリオノは国内外のコンクールで上位入賞に輝き、そのみずみずしく前向きな演奏が高い評価を得ている。現在はイギリスをはじめヨーロッパ各地で演奏する機会に恵まれ、名だたるホールで演奏するようになっている。2023年の来日時にインタビューしたときは、自身の歩みについてこう語っている。

「僕は5歳のころからピアノに魅せられ、最初に人前で演奏したのは9歳のときで、50分のソロリサイタルを行いました。その後、ロンドン近郊のパーセル・スクールという学校のオーディションを受け、1年後にケンブリッジのアカデミーに通うことになりました。15歳で英国王立音楽院に入学し、パスカル・ネミロフスキ教授に師事することになりましたが、先生は特別な存在です」

10代前半からは国外でも広く演奏するようになり、録音も開始することになる。

「音楽は僕にとって生きる糧のようなもの。ピアノはそのよき相棒です。子どものころからずっとヤマハのピアノを弾いていて音になじみがあり、安心して弾くことができます。ヤマハホールも木のぬくもりが感じられる温かな響きで気に入っています。モットーは、聴いてくれる人と音楽の歓びを分かち合うこと。弾き手も聴き手もみんなが幸せになる、それが音楽の醍醐味だと思っていますので」

 

エンターテイナーのような華やかさ、作品の神髄に迫る熱く深い演奏

彼は20世紀の偉大なピアニストたちから大きな影響を受けていると語る。ウラディミール・ホロヴィッツ、スヴャトスラフ・リヒテル、エミール・ギレリスをはじめとする歴史に名を残すロシアのピアニストたちである。その影響もあり、彼はロシア作品をこよなく愛す。今回の選曲もロシア作品を中心に彼が愛奏している作品ばかりが組まれている。

前回もそうだったが、今回もベートーヴェンのピアノソナタで幕開けする。冒頭からベートーヴェンの作品に備わっている多種多様な表現力、音楽性、構築性などが全開し、聴き手は一気にハリオノの躍動感あふれるフレッシュなピアニズムに引き込まれていく。その後はロシア作品が続く。

ハリオノは色彩感あふれる音色と若々しいリズムを特徴とし、ピアノを豊かにうたわせる奏法を披露するが、ロシア作品はいずれも視覚的な要素を内包し、聴き手の想像力を喚起するもの。ハリオノはそんな聴き手の心の奥深く浸透する響きを聴かせ、ひとつの大きな絵巻物のように輝かしい音を紡いでいく。

今回の聴きどころは、“イスラメイ”と“火の鳥”。燃え上がるようなリズム表現と、ピアノという楽器の可能性を極限まで探求した作品を、ハリオノがどう奏でるか、興味は尽きない。エンターテイナーのような華やかさと、作品の神髄にひたすら迫る熱く深い演奏を全身で受け止めたい。

 


LIVE INFORMATION
珠玉のリサイタル&室内楽
ジョージ・ハリオノ ピアノコンサート
George Harliono Piano Concert

2024年11月16日(土)東京・銀座 ヤマハホール
開場/開演:19:30/20:00
出演:ジョージ・ハリオノ(ピアノ)
料金(税込):5,000円(全席指定)
主催:ヤマハ株式会社ヤマハホール

■注意事項
※休憩なし60分公演
※都合により出演者、曲目が変更になる場合がございます。あらかじめご了承ください
※未就学児のご入場はご遠慮いただいております
※チケット料金には消費税が含まれております

■プログラム
L. v. ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ 第17番 ニ短調「テンペスト」Op. 31-2
M. グリンカ=M.バラキレフ/ひばり
M. バラキレフ/東洋風幻想曲「イスラメイ」
P. I. チャイコフスキー/ドゥムカ―ロシアの農村風景 ハ短調 Op. 59
I. F. ストラヴィンスキー(G. アゴスティ 編)/組曲「火の鳥」

■チケットぴあ
チケットぴあでのご予約・お申し込み
WEBからのお申し込み:http://ticket-search.pia.jp/pia/search_all.do?kw=281-586
※座席選択可能
Pコード:281-586
発売日:2024年9月21日(土)

■座席種別
指定席

■お問い合わせ
ヤマハ銀座店
TEL:03-3572-3171(ヤマハ銀座店 インフォメーション)
営業時間:11:00~18:30
定休日:毎週火曜日(祝日の場合は営業いたします)
住所:〒104-0061 東京都中央区銀座7-9-14
アクセス:https://retailing.jp.yamaha.com/shop/ginza.html#access
駐車場:https://retailing.jp.yamaha.com/shop/ginza/access-map-parking.html

https://retailing.jp.yamaha.com/shop/ginza/hall/event/detail?id=5890

 


PROFILE: GEORGE HARLIONO
9歳でのソロリサイタルデビュー以降、イギリスをはじめアメリカ、ヨーロッパ、アジアなど世界各国にて公演を行い、ウィグモア・ホール、ベルリン・フィルハーモニー、ロイヤル・アルバート・ホール、シカゴ・シンフォニー・ホールなどの著名なホールに登場。2013年にはロンドンのサウスバンク・センターにてベートーヴェン“ピアノ・ソナタ 第1番 Op. 2-1”のレコーディングを行い、2016年にはモスクワ音楽院大ホールで行ったチャイコフスキー“ピアノ協奏曲 第1番”の演奏はロシア国営テレビおよびMedici TVの配信で生中継された。12歳でオーケストラと初協演し、モスクワ国立交響楽団、マリインスキー歌劇場管弦楽団、タタルスタン国立交響楽団、シカゴ・ニューミレニアム管弦楽団、フランクフルト歌劇場管弦楽団、チュメニ・フィルハーモニー管弦楽団、仙台フィルハーモニー管弦楽団などと協演するほか、高名なピアニストであるデニス・マツーエフとの共演やヴァレリー・ゲルギエフ、アレクサンドル・スラドコフスキー、エフゲニー・スヴェトラーノフ、アイナルス・ルビキス、アントン・ルブチェンコ、高関健、セバスティアン・ヴァイグレといった多数の指揮者と共演。グランド・ピアノ・コンペティション(モスクワ)、仙台国際音楽コンクール、ロイヤル・オーバーシーズ・リーグ音楽コンクール(ロンドン)、ジーナ・バッカウアー国際ピアノコンクール(アメリカ・ユタ州)、ラニー=シュル=マルヌ国際コンクール(パリ)、ディヌ・リパッティ音楽コンクール(ブカレスト)といった世界中のコンクールで数々の受賞歴を持つ。2023年第17回チャイコフスキー国際コンクールにて第2位受賞。最近ではモスクワのザリャジエ・コンサートホールにてベートーヴェン“ピアノ協奏曲 第5番「皇帝」”を、フランクフルトの旧オペラ座にてリスト“ピアノ協奏曲 第1番”を演奏。またポーランドにおいて最も歴史のある重要な音楽祭、ドゥシニキ国際ショパン音楽祭に招聘され演奏を披露。最年少の15歳でフルスカラシップ奨学生として英国王立音楽院に入学し学士号を取得。英国王立音楽院にてパスカル・ネミロフスキ教授に師事するほか、ドミトリー・バシキーロフ、ウラディーミル・アシュケナージ、ウラディーミル・オフチニコフ、サイモン・レッパーといった名指導者のマスタークラスを受講。また彼にアーティストとしての才能を見出している指揮者のアレクサンドル・スラドコフスキーとも度々共演している。ロシアの名ピアニスト、デニス・マツーエフは「ジョージ・ハリオノは大変才能に恵まれている。これから驚くべきキャリアを積むだろう」と彼を評している。2018年にはロンドンのクラシック・ブリット・アワーズで、期待の新人アーティストを対象としたサウンド・オブ・クラシカル・ポールにノミネートされた。2022年にはザリャジエ・コンサートホールにて行ったアレクサンドル・ルディン指揮のベートーヴェン“ピアノ協奏曲 第5番「皇帝」”の演奏に対して、440Hzアワーズのベストゲストアーティスト賞を受賞。