ナイトメアズ・オン・ワックスの名盤をエイドリアン・シャーウッドがリワーク!

 20年前に登場したナイトメアズ・オン・ワックス(以下NOW)の名盤『In A Space Outta Sound』(2006年)が、エイドリアン・シャーウッドの手によってリワークされ、このたび『In A Space Outta Dub』として完成した。30年以上のキャリアを誇るNOWことジョージ・エヴリンも、「完璧な組み合わせだった。エイドリアン・シャーウッドが手掛けたら、当然いいものになるよな(笑)。とても心地良くて、原曲への敬意を感じつつも、新たなひねりが加わって、まったく違う世界に浸ることができる。だから、彼は〈リミックス〉したというよりも、〈リヴァイヴ〉したと言えるだろうね。彼の世界観をNOWの世界に融合させたこの共同プロジェクトは、実に美しいものに仕上がっている」と満足そうだ。

NIGHTMARES ON WAX, ADRIAN SHERWOOD 『In A Space Outta Dub』 Warp/BEAT(2026)

 そもそもオリジナルの『In A Space Outta Sound』は、ジャケからもわかるようにサウンドシステム・カルチャーに憧れて育ってきたエヴリンにとっては「自分のルーツに根差した作品」だった。ジュディ・クレイ&ウィリアム・ベル“Private Number”をネタ使いした代表曲“You Wish”やロイド・チェンバース“Oh Me Oh My”を敷き詰めた“Flip Ya Lid”など、親しんできたソウルやレゲエ、ヒップホップのエッセンスをNOW流儀のスモーキーなサウンドで再構築した同作は、多様なスタイルを試みてきた彼にとっても過去と現在を繋いだ特別な一枚だったといえる。昨年のミックステープ作品『Echo 45 Soundsystem』でも往時の様式にオマージュを捧げていたエヴリンだが、それだけにUKダブの総帥がリワークを手掛けるというアイデアはアニヴァーサリー企画以上の意味があるもので、その過去と現在の奥行きは当然ながら20年どころではない。

 70年代末からOn-Uサウンドを率いて活動してきたシャーウッドは、近年も自身のソロ名義作やクリエイション・レベル、ホレス・アンディらの作品を送り出す一方、パンダ・ベア&ソニック・ブームの『Reset In Dub』(これはエヴリンがお気に入りだそう)やスプーンの『Lucifer On The Moon』といったリワーク作品でも折に触れて注目を集めてきた。トリップホップ時代に台頭したエヴリンとは遠からず近からずの位置に思えたが(なお、92年にSOFT BALLETのリミックス盤『ALTER EGO』で両者はニアミスしている)、意外にも両者が会話したのは本作にまつわる打ち合わせの電話が最初だったという。

 「話すのは初めてだったけど、彼は『In A Space Outta Sound』のファンで、隅から隅まで熟知していることを知った。つまり、お互いに尊敬し合っていたんだ」(エヴリン)。

 「あの作品のことはすでに知っていて、〈俺の周りにいる素晴らしいプレイヤーたちを使ってこのレコードを作りたい〉と思えるような内容だったね。今回の作業は本当に楽しかった。基本は俺の『The Collapse Of Everything』で用いたのと似たような手法で、古い素材を俺たちのスタイルで甦らせていったんだ」(シャーウッド)。

 シャーウッドによると本作は「単なるダブ・アルバムではなく、ピュアなダブ技術を用いて、オリジナルを完全にSF風に再構築したものなんだ。とにかく本当に美しいサウンド作品を作りたかったんだよ」とのことで、ダグ・ウィンビッシュら馴染みの演奏陣と自由に取り組んだという。エヴリンの側も具体的なオーダーや指示はしなかったそうだ。

 「〈ここにもう少しキーを足してみて〉みたいなやりとりは少しあったけど、100%エイドリアンを信頼したよ。彼は常に情報を共有して、作業の過程で断片的な音源も送ってくれた。常に協力し合いながら最高のものを生み出そうと突き進む姿勢で、本当に興味深いプロジェクトだった」(エヴリン)。

 「とにかく新鮮に聴こえるようにした。つまり、オリジナルに十分近いけれども、同時に誰もを虜にするようなオリジナルとは十分違いを持った作品を作りたかったんだ」(シャーウッド)。

 そんな意図がどのような成果を上げたのかは、“You Wish”をすっきり再構築した“You Bliss”を筆頭とする8曲を聴けばわかる。

 「ミックスを担当したエンジニア(マット・スマイス)の仕事ぶりも高く評価したい。実に温かみのあるサウンドで、ふわふわした雲のような音に仕上がっているだろ? ベースの音は重くなく、ひたすら心地良い。アルバム全体のプロダクションと仕上がりのクオリティには大満足している」(エヴリン)。

 そんな素晴らしい仕上がりを見せる『In A Space Outta Dub』に浸れれば、今度は両名の組んだオリジナル作品も聴いてみたくなろうものだ。繋がりの生まれた大物たちの今後にも期待したい。

左から、エイドリアン・シャーウッドの2025年作『The Collapse Of Everything』、クリエイション・レベルの2023年作『Hostile Environment』(共にOn-U Sound)、パンダ・ベア&ソニック・ブームの2023年作『Reset In Dub』(Domino)、スプーンの2022年作『Lucifer On The Moon』(Matador)

ナイトメアズ・オン・ワックスの作品。
左から、2006年作『In A Space Outta Sound』、2021年作『Shout Out! To Freedom...』、2025年のミックステープ『Echo 45 Soundsystem』(すべてWarp)