リリース20年目の傑作が証明するダブの拡張力

 〈Warp Records〉最古参、ナイトメアズ・オン・ワックスことジョージ・エヴリンの2006年作の20周年記念盤は〈On-U〉の頭目エイドリアン・シャーウッドによる一作まるごとダブワーク。リミックスでも解体でも脱構築でも再構築でもあり、またそのいずれにもあたらないような独創的な仕上がりになっている。

NIGHTMARES ON WAX, ADRIAN SHERWOOD 『In A Space Outta Dub』 On-U/Warp/BEAT(2026)

 原典となる『In A Space Outta Sound』をあらためて振り返ると、1995年の2作目にして代表作『Smokers Delight』のおよそ10年後の4作目で、前作『Carboot Soul』を経由したメロウでラウンジーなサウンドに、レゲエやダブのエッセンスを溶かし込んだダウンテンポということになるのだが、サウンドは全体的に重心が高く、総称としてはダウンテンポより(本作の時点でエヴリンはまだイビサに移り住んでいなかったはずだが)バレアリックの符牒が似つかわしい。むろんこれは本作の瑕疵であるどころか、耐用年数を伸ばしている遠因のひとつだが、心地よくも水も漏らさぬ鉄壁の12曲(日本盤はボーナストラック入りの13曲)をUKダブの総帥はいかに料理したのか。

 結論からもうしあげると、総帥の腕前に感服する一枚になったといえる。本作のような作品では原典との異同がまず気になるが、シャーウッドはエヴリンの音楽の骨格を残しながらそこに自由な解釈を次々と被せていく。曲順も変わっているのでオリジナルの再現を望む向きは戸惑うおそれもあるが、名曲“Flip Ya Lid”のクラップにあたるサウンドを、そのダブ版“Flippin’ Eck”ではリズムボックスにおきかえるなど、遊び心あふれる仕掛けが張り巡らされていて何度も聴き返したくなる。対象との相性のよさゆえかと思いもするが、シャーウッドにはパンダ・ベアとソニック・ブームの『Reset』のダブ化もあり、音楽的な類縁性のみでは語れない。ダグ・ウィンビッシュ(ベース)ら〈On-U〉一派の参加が功を奏しているのはいうまでもないが、創造的解体という言葉が戦慄をおぼえるほど似つかわしい作品もそうはない。

 


LIVE INFORMATION
ADRIAN SHERWOOD presents DUB SESSIONS 2026

2026年9月9日(水)東京・渋谷 Spotify O-EAST
2026年9月10日(木)大阪・難波 Yogibo META VALLEY

■出演
エイドリアン・シャーウッド、ナイトメアズ・オン・ワックス