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角松敏生 『SEA IS A LADY』 AIR/BMGビクター(1987)

全編インストで固めた初のアルバム。角松がギターソロでメロディを歌う、フュージョンナンバーがメインになっている。パソコン音楽クラブがオマージュするなど、2010年代以降のシティポップリバイバルで再評価著しい作品だが、Jフュージョンに注目が集まっているまさにいまこそ聴きたい。

歌がないインストだからこそ、テクニカルな演奏の妙や機微に耳を持っていかれる。また映像喚起的で、海、岸辺、晴れた空、夕暮れ、ハイウェイ、都市……といった景色、それらを目にしたときに心の内で動く感情を浮かび上がらせるのが魅力的だ。

水飛沫のように煌びやかなギターのカッティングが光る“SEA LINE “RIE””、ハードファンク“OSHI-TAO-SHITAI “KAORI ASO” (MEMORIES OF DUSSELDORF)”などいかにも角松節な曲が多い一方、”アコースティックギターが活躍する“SUNSET OF MICRO BEACH “SATOKO””のような意外性がある曲にも注目したい。エレクトロニックな“WAY TO THE SHORE “ERI””、佐藤博のピアノが素晴らしい“SEA SONG “NAOMI””“SEA SONG (REPRISE)”といったチル&メロウサイドも極上だ。“THE BASS BATTLE “CHAKO””では、曲名どおり青木智仁、櫻井哲夫(CASIOPEA)、高水健司がベースソロでバトルを繰り広げ、Jフュージョンらしい熱が感じられる。しばらく鳴りを潜めていたリゾート性がジャケットや曲名に再び表れているのもポイントか。2017年には、リテイクや新曲などを加えた『SEA IS A LADY 2017』が発表されている。

 

角松敏生 『BEFORE THE DAYLIGHT 〜 IS THE MOST DARKNESS MOMENT IN A DAY』 OM/BMGビクター(1988)

外伝的な『SEA IS A LADY』から一転、『GOLD DIGGER』以降の方向性をより強化した7作目。本作で重要なのは、セルフプロデュースを手放し、フィリップ・セス、レニー・ホワイト、ピーター・シェラー&アート・リンゼイ、ジェフ・ボヴァ&ジミー・ブラウワーという4組の海外プロデューサーに自身の曲を委ねたこと。そのため、JADOESが参加した“I’D LIKE TO BE YOUR FANTASY”のイントロを除き、全編海外ミュージシャンによる演奏になっている。なかにはナイル・ロジャース(ギター)、マイケル・ブレッカー(テナーサックス)といったスタープレイヤーが参加した曲も。

とにもかくにも、ニューヨークの音そのものな、強力なエレクトロファンク/ブギーが極まった作品だ。しかし、オリエンタルな旋律が顔を覗かせる“GET YOUR FEELIN’”、ビル・フリゼールが参加したアート・リンゼイ製のエスノファンク“CAN’T YOU SEE”など、徹底した洋楽志向のなかに微量の異物感を混ぜ込んでいるのが角松らしさか。

このアルバムで〈第30回日本レコード大賞〉の優秀アルバム賞を再受賞。オリコン週間アルバムランキングでは、角松がプロデュースした中山美穂『CATCH THE NITE』が1位を獲り、本作が2位に輝き、トップ2を独占したことも話題になった。1980年代後半、角松が邦楽シーンの頂点に君臨していたことを証明した作品だ。