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CM音楽で培った雑食性を発揮した「ルパン三世」シリーズ

歌謡曲やポップス分野の仕事でもまた、大野は独特の存在感を放っている。由紀さおり、弘田三枝子、尾崎紀世彦、松田優作、サーカス、さらに1980年代の麻倉未稀や中森明菜、平成のSMAPに至るまで、相当幅広いアーティストたちの楽曲に関わっているのだが、ここでは近年海外からの再評価が著しい2組の作品を紹介しておこう。

歌謡曲の歌手と思われがちなしばたはつみは、大野をアレンジャーに迎えてソウル~ジャズファンク色の強いアルバムを3枚リリースしている。とくに『シンガーレディ』(1975年)はアッパーな表題曲をはじめDJニーズの高い一枚だ。

しばたはつみ 『シンガーレディ』 コロムビア(1975)

幻想的な世界観を持つシンガーソングライター、佐井好子の『萬花鏡』(1975年)もアシッドフォーク/サイケ的な文脈でのインバウンド需要が急増している。最近では海外でもアナログ盤がリイシューされるほどの人気ぶりだが、それも全編のアレンジを担当した大野の洒脱なセンスに依るところが少なくない。

佐井好子 『萬花鏡』 BLACK(1975)

大野雄二の名前を一躍メジャーに押し上げたのは、横溝正史原作で角川映画の記念すべき第1作でもある「犬神家の一族」(1976年)だろう。型破りな手法を好む角川春樹の指名により、ほとんど映画経験のなかった大野が音楽監督として異例の抜擢を受ける。その起用は見事に功を奏し、ダルシマーという聴き慣れない音色の楽器が主旋律を奏でる流麗なテーマ曲“愛のバラード”は、角川映画および横溝ブームを象徴する名曲として現在でも広く知られている。

大野雄二 『「犬神家の一族」オリジナルサウンドトラック』 ビクター(1976)

角川は続く森村誠一原作の「人間の証明」(1977年)、「野性の証明」(1978年)でも大野を続投させたのだが、サントラはともに「犬神家の一族」以上の大ヒットを記録。角川が仕掛けた、映画、原作小説、レコードの三位一体によるメディアミックスに大野の音楽は大きく貢献したのである。

大野雄二 『「人間の証明」オリジナル・サウンドトラック』 アトランテック(1977)

大野雄二 『野性の証明サウンドトラック』 コロムビア(1978)

そして1977年、大野雄二の代名詞にしてライフワークとも言うべきアニメ「ルパン三世 PART2」が放送をスタートする。アニソン史上最も有名なインストナンバーである“ルパン三世のテーマ”は、誰もが口ずさめるほど明快でありながら、コミカルでもハードボイルドでもあらゆるシーンに対応できることを目指したという。そのメロディの驚くほどの普遍性は、以降も時代ごとにさまざまなバリエーションでアレンジされながらも、まったくブレることのない強靭さをいまだ保っていることによって証明されているだろう。

また、無国籍的な雰囲気を持つ「ルパン三世」という作品は、CM音楽時代に培われた大野の雑食性を発揮するには格好の場だったに違いない。テーマ曲のみならず劇伴もまた、ジャズ、ロック、サンバ、ボサノバ、ソウル、レゲエなどさまざまなジャンルを行き来したクロスオーバーな仕上がりで、それまでのアニメの常識を大きく覆していた。

「ルパン三世」シリーズは瞬く間に国民的な人気アニメとなり、大野は以降もテレビスペシャル、劇場版を含む同シリーズの(わずかな例外をのぞく)ほぼ全ての音楽を担当することになる。まさに大野雄二は〈ルパンの音〉そのものだと言えるだろう。