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ポップに幸あれ!

――(笑)。その点、中南でレゲエやダブを持ち出せば他のインディーバンドとの差異化は図れるじゃないですか。座布団忍者では、どうやってそういったジャンルとの距離感を保っているんですか?

秋田「確かに差異化は簡単にできるかもしれませんが、いわゆる〈ワールドミュージック〉をガサツに取り入れることはしたくないんです」

河上「品性がないよね」

秋田「そう、何も考えないと渋谷系仕草になるというか。90年代に渋谷系が色んなものを引用できたのは、バブルの余波と消費することに開き直る若者精神みたいな、そういう時代背景があったからだと思うんです。

ただ、今の露悪的で情勢の荒れている世の中では、何かを引用する上での重たさも必要になってくる。批評性が全てとまでは言わないけど、批評性のない人が増えすぎているなというのは感じますね」

河上「僕らのこういうスタイルに関してさ、叱ってくれる人もいなくなったじゃん? 色んなものを引用したら〈あんた偉いね!〉とか〈サブスク世代の星や!〉みたいな感じで。自分たちのレビューを見てても〈サブスク時代ならではの音楽〉ってよく書かれてるんですけど、むしろ自分たちが影響を受けた音楽はサークルとか属してるコミュニティや親族から口伝で教わったものが多かったりして。土着的なものこそないですけど、自分たちの音楽には必然性があると思ってるんです」

――批評性や野心を抱えている上で、座布団忍者はルサンチマンをガーってぶつけるのではなく、とても聴き馴染みがいい形でアウトプットしているじゃないですか。例えばアルバムでは、聴き馴染みのよさを保つというバランス感について意識しましたか?

河上「めっちゃ考えたよね!? 〈ここまでやったら聴いてくれないんじゃないか?〉みたいなギリギリのラインを探したというか」

秋田「田中宗一郎さんのすごい好きな言葉があって。〈ポップの役割は果てしなく広がる無知と無関心の地平に語りかけること〉っていう。色々な鬱憤があるけど、それをアバンギャルドなものとして吐き出すよりも、我々はポップなものが好きで育ってきたわけで、ならポップであることを放棄しないっていうカッコよさを追求したいなと考えていました。それで……俺この前良いこと言ったんだよな……ちょっと待ってくださいね(Xを開く)」

――自分の名言を引用するんですね(笑)。

秋田「……あ、出てきました。〈ポップミュージックとは軟弱の裏返しではなく、あらゆる思惑を封じ込め、強い威力を持ちながら幅広くリーチすることが可能な魔法。ポップに幸あれ!!〉ですね。本当にそうだなって。ひ弱に思われたくはないですね。バシッと決めてガンってくるポップが一番強いと思います」

河上「わかる。最近練習が楽しくてね。この前のリリースライブは8人編成だったんですけど、それが本当に良かったんですよ。中南の先輩とか後輩を呼んだんです、ダブワイザーも入れましたし」

――今の20代のバンドって、ダブワイザーと一緒にライブする方がジャンルを問わず多いですよね。

河上「確かに。ライブで卓がバーンってあるのって良くないですか?」

野﨑「楽しいよね(笑)」

秋田「なんというか……サイケとかシューゲイザーにみんなが求めているものが大きすぎて、結果的にダブにもそれに該当するものがあるってことに気づき始めた人が多いんだと思います。2010年代から続いていたドリームポップのような音が頭打ちになったら、80年代のようなノリでもう一回いわゆる〈ワールドミュージック〉が来ると思うんです。それでリバーブとかディレイの快感を同時に求めたらダブに行き着くっていう」

河上「空間を広げるだけじゃなくて、抑制する気持ちよさがダブにはあるよね。それでスネアがパンって鳴るっていう」

 

衒っても仕方ない

――座布団忍者には3人のソングライターがいますよね。作曲の段階から、そういった自分たちのポジショニングについては考えているのでしょうか?

秋田「僕と(河上)憲将は文脈とか構成を考えちゃうけど、(野﨑)千鶴ちゃんの曲は普段の暮らしから出てきた感じで、衒ってない感じがリアル」

野﨑「まぁでも〈生活〉みたいに思われるのは嫌というか……」

秋田「ごめん!」

野﨑「(笑)。まぁ事実ですね。衒っていても仕方ないなというか、自分がカッコつけたところで良いものができた試しがないんで。何も考えずに作ったものに〈それいいね〉って言われることが多いので、もう何も考えないようにしています。“快速電車”とかはそのまんまの歌詞ですね」

河上「千鶴ちゃんには勝てない部分があるなって思います。80年代後半に教授(坂本龍一)と村上龍の対談で、忌野清志郎がどんなに〈愛し合ってるかい?〉って言っても、中島みゆきの〈お風呂を出て髪をとかしています〉みたいな一節に勝てないっていうニュアンスのことを言われてて。それは女性であることに限らずとも、自然体でいるという点で似たものを千鶴ちゃんには感じます」

――では河上さんは清志郎側というか、奇を衒うタイプなんですか?

河上「歌詞に関してはナチュラルに出せないですね。むしろイライラしてる時にボロって出てくる。アルバムのラストの“貴方は踊るのをやめない・愛のありか”はそんな感じで作りました。イライラしている時ほど優しい歌詞が出てくるなって、最近気づいたんですよね」

秋田「良いやつだ」

河上「はい、良いやつです」