
チーチャとアフロポップと歌謡曲に共通する批評性
――作曲はどうですか? リファレンスを設定して進める方式でしょうか?
河上「リファレンスはありつつ、結果的に今ある音楽とは違うものになるようにはしています」
秋田「渋谷系的な作り方ではないよね」
河上「そもそも、僕らいいとこの坊ちゃんでもないし(笑)」
秋田「〈ロックステディのこの感じが欲しいな〉とかは思いますけど、特定の曲に似た曲をオシャレにやりたい気持ちは微塵もない。むしろ曲の中にあるパッションの部分を引っ張ってくることを考えてます」
――その点、アルバム冒頭の秋田さんが作った“Mr.Dの逆襲”は、チーチャのスタンダードなフレーズから始まりますよね。
秋田「チーチャとアフロポップと歌謡曲をやりたくて。でも、そういうのは節操ない風に思われがちというか。僕は批評性みたいなものを考えるタイプなので、その3つは繋がっているという認識なんです。ペルーのチーチャというのは、コロンビアの音楽であるクンビアにアメリカからやってきたサーフロックのエレキギターを取り入れた音楽です。アフロポップも、西洋のポピュラーミュージックの波を取り入れつつアフリカらしさを保っている。歌謡曲も、元を辿れば西洋からの外圧のようなものから影響を受けていますよね。
そういうごちゃ混ぜの感覚が大事だと思ってるんです。自分のルーツを大切にするのは良いことだけど、〈外のものを取り入れちゃいました〉みたいな感覚も大事にしたいし、ダンスフロアはそうあるべき。ダンスを軸にしたアルバムの1曲目だからこそ、〈ダンスにおいてはごちゃ混ぜの方が面白いぞ〉って言いたかったんです」
――それで『Still, You Dance』というタイトルに繋がると。
河上「出来た曲を、あまり考えずにポンポン入れていったので、思ったよりコンセプチュアルなアルバムにならなかったけど、〈ダンス〉は軸になってると思います。ただ、次はアルバムを見据えて曲を作りたい」
秋田「今回は〈ごちゃ混ぜ〉がキーフレーズというか。Gacha Popかも」
河上「今になってGacha Popを名乗るのはヤバい(笑)※」
秋田「(笑)。作品としては時系列で並べてるつもりなんですよね。アフロポップから千鶴ちゃんの“待合室”でドゥーワップになって、それからロックステディとダブに行ってギターポップとAOR、そこからディスコも入って現代のインディに戻るっていう」
――時代を下って、そこからまた戻ってくるというか。
秋田「それで一応まとめた感じですね。あと、今のインディにはダンスが足りてないって前に話したよね?」
河上「うん」
秋田「ダンスに嫌悪感のあるようなタイプの人もいるかもしれないけど、もっと根源的で、部屋の中で踊れるようなものを目指したかったというか」
フェイクにソウルが宿るカッコよさ
――なるほど。金子さんはドラマーとして様々なジャンルを叩く必要があるじゃないですか。そこで悩むことはなかったんですか?
金子「単に言われた通りにやっただけなんです。もちろん、作曲者の意図を汲み取って自分なりに解釈はしたけど、3人が作家なんで、僕は演奏家に徹しているという」
河上「〈スネアロールじゃない、32分音符の刻みなんだ!〉とかね」
金子「そうそう(笑)」
――ドラムを起点に展開が決まった曲はあります?
秋田「“Vanishing Girl 2”はライドとかXTCを意識していたんですけど、途中でつまんなくなっちゃって、そこからリズムを変えたんです」
河上「千鶴ちゃんがワールドミュージックに傾倒している時期のポール・サイモンの曲を流していて、それが面白かったんですよね」
――『Graceland』ですか?
河上「そう。フェイクにソウルが宿るカッコよさがあった。そういうのが好きなんです。サンバなどを取り入れたレッド・ツェッペリンの『In Through the Out Door』とか、聴くと爆笑しちゃうんですよ」
秋田「憧れを持って近づこうとすると誤解が生まれるんだけど、むしろそれがすごくカッコいいというか」
――しかも、座布団忍者の場合、色んなものをごちゃ混ぜにした音楽に日本語のメロディが乗るという面白みもありますよね。
秋田「俺たちが英語でロックステディをやっても面白みはないし、リアルさがないんですよね。嘘をついているような感じがして」
――嘘は嫌だけどフェイクは好きなんですね。
河上「そうそうそう」
須藤朋寿(NEWFOLK)「偽物が本物になる瞬間が好きなんだよね」
秋田「そうです。プラスティックソウルというか」