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『TOKYØHUM』が誰かに勇気を与えられるものになれば

──アルバムのアートワークはB-BOY彫刻家の小畑多丘さんがデザインされていますが、どのような経緯で依頼されたのですか?

「数年前、あるイベントで初めて会ったんだけど、俺の勉強不足もあってそれまで多丘くんのことを知らなくて。だから会ったタイミングで、彼がブレイクダンサーであることをベースに自分なりの世界観を作っている人だと知ったんだよね。

今回アルバムを制作していくうちに、前作のジャケットでは自分の写真を使ったから次は絵やグラフィティにしようとスタッフと話をしていて、そのときに多丘くんはどうかなという話になった。実際に会って話をしたら、B-BOYであることを忘れず、常に新しい表現を模索していることにすごく感動したし、ルーツは俺と同じだなと共感できた。それで一緒にできたら最高だなと思って依頼したら、俺の前のアルバム『再生 -SAISEI-』と『道 -STORY-』のレコードをズタズタに切ってアートワークを作ってくれたんだ。

レコードの溝がちゃんと表現されているし、アルバムの持つ音の重みや物質感が見事に視覚化されていて、唯一無二の佇まいを持ったアートワークに仕上がったと思う。発想がすごいし、そこにヒップホップを感じたよ。しかも使ったレコードタイトルが『再生 -SAISEI-』と『道 -STORY-』で、それらの盤を使って新たな道を作ってくれたことも素晴らしいなと思ったね」

──今作はデジタルだけでなくCD、レコード、カセットテープでもリリースされます。配信全盛のこの時代でフィジカルにこだわった理由は?

「どのフォーマットも音の質感が違うと思うんだよね。音を聴き比べてもらって没入してほしいなと思った。アナログは10曲しか収録されないから本来ならレコード1枚でも収まるんだけど、いい音で聴いてもらいたくて今回2枚組にしたんだよね。レコードの片面に2、3曲しか入っていなくて、45回転にすると音が良くなるからさ。アルバムだけどLP盤じゃなくて12インチ扱いにもなるしね」

──では、デジタルの良さは何でしょうか?

「個人的に聴く分にはアナログの方が好きだけど、DJとしての目線でいくと、俺はツアーで移動が多いし、デジタルはDJをするときに便利だよね。クラブでDJをするときは使う音を一度取り込んで、そこにアナログ的な音を入れたり、エフェクトをかけたりしている。それといつも使っているミキサー(Vestax PMC-20SL)は200カ所くらい改造していて、チップも全部変えて、電源も自分の好きなコードに変えられるようになってるし、シールドもアナログっぽくなるやつを選んだりしてて。

やっぱりフロアでは純粋にいい音で聴いてもらいたい。聴く側も迫力を感じるだろうし、浴びる音も全然変わってくるから。デジタルはそうした工夫をこっちでできる点も便利だと思う」

──実際に今作をいいシステムのある空間で聴けたら最高ですね。

「日本でやるリリースパーティーでは、スピーカーから出てくる太い音の感じや、張り付いてる声を聴いてもらいたいっていう思いがあるから、ゲストラッパーを全員呼んでステージに並べられたらいいなとは思ってる。それを後ろで日本人の俺が操ってるっていう光景も、なかなか面白いんじゃないかな」

──今後の予定など、アルバムリリースにあたりメッセージをいただければ。

「『TOKYØHUM』を引っ提げて、ヨーロッパと日本国内を回るツアーで直接フロアにこの音を叩き込みに行きます。それと並行して、THA BLUE HERBのBOSSとのアルバムがリリースされるけど、互いの歩んできた道と魂が交差する、濃度の高いアルバムに仕上がっているので、そちらも楽しみにしていてほしい。

コロナもようやく落ち着いて通常モードになって、最近はAIの登場があったりして、また時代のフェーズが変わったなと思うんだけど、そんな世の中と連動して、『TOKYØHUM』が誰かに勇気を与えられるものになればいいなと。流されないでやっていけば背中を見てくれている人たちがいるし、自分がステージに立っていられるのは賛同してくれる人たちがいるから。絶対にブレちゃダメだなと日々思っています」