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どん底から這い上がる術はいくらでもある

そんな佐々木だが、前述の駆け出しの時代や、大学の野球部を辞めてゲームばかりやっていた頃など、ダメダメで落ち込んだ時期が長くあったことも本書では明かされている。そもそも、エバースはNSCでも落ちこぼれで、芽が出るのも遅かった。それ以前に、佐々木は甲子園出場というゴールに向かってまっすぐ生きてきたのに、その夢は叶わずに潰えた。

だからこそ、佐々木がこの本の中で綴った歩みは、多くの人に力を与えるものなのではないだろうか。所属するコミュニティや文化や社会からドロップアウトしてしまっても、いま周囲に認めさせる実力がまったくなくても、どん底から這い上がる術はいくらでもある、と言っているかのように読めるのだ。自助努力だけでなく、エバースをフックアップした山田ナビスコやオズワルドのような存在も重要で、自分を支えてくれる人、アドバイスをくれる人の大切さも、本書を読んでいて感じられる(……もちろん、本の中で散々愚痴を書かれている町田のような相方≒パートナーも)。

余談だが、連載が2024年から始まっていることは上に書いたが、エバースが劇場の枠を超えて一般的に認知されるようになったのは、「M-1グランプリ2023」の敗者復活戦で〈ケンタウロス〉のネタを披露したとき。なので、QJ編集者の慧眼というか、目のつけどころの鋭さには、同じ編集者として嫉妬を覚えるほどだ。

 

エバースを知るためのDVDや雑誌

なお、「ここで1球チェンジアップ」以外にも、エバースを知るために手に入れたい書籍などが多数ある。まずは初のDVD「エバース全国ツアー「エンタイトルスリーベース」」が、2027年3月10日(水)にリリースされる。現在開催中の単独ツアーのファイナル公演が収められる予定で、ツアーに行くファンも行くことが叶わない人も要予約だ。そして、本書とあわせて読みたい雑誌「クイック・ジャパン vol.184」も発売中。初の表紙で巻頭特集が40ページにわたって組まれている。「NYLON JAPAN」によるお笑い雑誌「OWARAI NYLON 03」は、裏表紙がエバース。また、ニューエラの最新コレクションを特集した「The NEW ERA Book Spring & Summer 2026」にもエバースが登場している。エバースの真骨頂である漫才はDVD「M-1グランプリ2025「漫才万歳」~連覇の先に、軟弱の星~」「M-1グランプリ2024 ~20回目、1万組の“夢の入口”~」で見よう。あの〈ドライブデート(通称・ルンバ車)〉〈桜の木の下〉という傑作を、いま改めて堪能したい。

 


BOOK INFORMATION

エバース, 佐々木隆史 『ここで1球チェンジアップ』 太田出版(2026)

発売日:2026年7月14日(火)
ISBN:9784778341350
仕様:四六判/240ページ予定
価格:1,980円(税込)

目次
【第一章】 なんにもない田舎で育てた自信 ──小学生~中学生時代
野球一族の末っ子として誕生 
弱小高校夢の(妄想)甲子園への道 
2003年の『M-1』はガチでえぐい 
井の中の蛙大海を知らず 
人を笑わせられるヤツがかっこいい 

【第二章】 甲子園には行けなかった人生 ──高校生~大学生時代
ついに始まった人生の「本番」 
空気を読んだ結果なったキャプテン 
ナメられたくない一心でつかんだ優勝 
手がかかりもしなかった最後のチャンス 
アウェーで知った本当の自分 
学生コーチって何? 
忘れられない親の顔 

【第三章】 まだ、本気出してないだけ ──NSC入学
超絶堕落大学生 
人生の新たな軸を探して 
「観る」から「やる」に変えたダイアンのラジオ 
大谷翔平マインドでNSCへ 
『M-1』が待っていてくれた…? 
めっちゃスベってたヤツと、とりあえずコンビ結成 
面白い漫才の作り方を知らないだけ 
何もわからないままプロへ 

【第四章】 最強の漫才師への道 ──デビューから下積み時代
感情を殺していた四軍時代 
やりすぎた現実逃避 
褒めてくれる人に出会い、動き出した芸人人生 
兄貴からのバイト代 
一回戦敗退経験「四回」 
恐怖と隣合わせの猛獣との暮らし 
エバース最大の危機 
何もできない相方の良さ 

特別コラム① 無限大地獄 
特別コラム② バイト先の美人なお姉さん 

【第五章】 人生、意外にうまくいってる? ──『M-1グランプリ』決勝進出後
『M-1』が持つパワー 
手放すしかなくなってしまった家宝 
キャッチャー・町田が出したサイン 
根拠のない自信に救われてきた 
野球少年が漫才師になって 

特別コラム③ 『M-1』決勝に行けた人生 
特別コラム④ 『桜の木の下』で 
特別コラム⑤ ちゃんみなの“本質を見極める能力” 
特別コラム⑥ ワインドアップはやめない 
特別コラム⑦ 終わらなかった夏休みの宿題 
特別コラム⑧ 好きだった子とポケモン 
特別コラム⑨ 『ABCお笑いグランプリ』
特別コラム⑩ 人類8週目の僕たちは
特別コラム⑪ 隣の大天狗の振り見て我が振り直す
特別コラム⑫ 記憶がない記憶 
特別コラム⑬ 全部ひっくり返す 
特別コラム⑭ とにかくおもしろい漫才を 
特別コラム⑮ 人生の最高傑作