How Deep Is Your Love
ニューオーリンズの鬼才、PJモートンが2部構成の新作『Saturday Night / Sunday Morning』を完成! 所属するマルーン5の“Sunday Morning”とは関係なく(?)土曜の夜と日曜の朝を通じて真摯で敬虔な持ち味を表現した快作だ!
アトランタやLAでの音楽活動を経て、地元ニューオーリンズに拠点を移し、モートン・レコーズを設立してから今年で10年。PJモートンは、マルーン5の鍵盤奏者として活動する一方で、クリスマスやゴスペルの企画盤、アフリカ探訪作を含むソロ・アルバムを精力的に発表してきた。近年はダーレル・ウォールズやティードラ・モーゼスらとのプロジェクトも手掛け、現代R&Bとゴスペルの良心として業界内での信頼は高まるばかりだ。
そんな彼が奴隷解放を祝うジューンティーンス(6月19日)に発表した新作『Saturday Night / Sunday Morning』は、土曜の夜と日曜の朝をテーマにしたもの。つまり、俗世にまみれた翌日は礼拝に行くクリスチャンの週末を謳った作品であり、この表題は、聖俗を跨いで活動するPJの音楽性も改めて伝えている。アルバムはR&B編とゴスペル編の2部構成(CDとアナログは2枚組)。録音は、近年、旧オーナーから購入したルイジアナ州ボガルサの名門スタジオ〈スタジオ・イン・ザ・カントリー〉で行われた。初期からPJを支えるエド・クラーク(ドラムス)やブライアン・コッカーハム(ベース)、タイ・トリベットの弟でネオ・フィリーのシーンにも貢献したサディアス・トリベット(ベース)、キーヨン・ハロルド(トランペット/フリューゲルホルン)らと奏でるサウンドは、生楽器の躍動感と温かみに溢れ、PJの朗らかな歌を飾り気なく引き立てる。
R&B編は、冒頭の“Mutual”からお馴染みのスティーヴィー・ワンダー節が全開。“Protect My Heart”もスティーヴィーの“Overjoyed”を彷彿とさせる。レゲエ調の“Don’t Give Up On Us”、管弦の響きが美しいスロウ“Listened To You”、西ロンドンの新鋭ルクサナ・メリーズと歌うバラード“Autopsy”まで、2017年作『Gumbo』以降のPJの集大成といった趣だ。タイトにグルーヴするディアンジェロ風の“Sell My Soul”は、〈決して魂を売ったりしない〉というシンプルで力強いメッセージに、インディペンデントで活動する音楽家としての矜持を見る思いだ。
ゴスペル編のサウンドもR&B編と大差はない。が、牧師の息子らしい慈しみ深い歌とピアノを軸にした楽曲は、折り目正しくエレガントで、タンバリンなどで拍子を取る“Feeling Free”から教会の雰囲気を漂わせる。セカンドライン的とも言える祝祭感のある“Could’ve Been Me”、往時のサザン・ソウルに通じる“Always On Time”など、米南部のレイドバックした空気も全編に立ち込めている。
両編とも目新しさはないが、この安定感こそがPJらしさたる所以。常に原点を見つめ直しながら成長していく、誠実なソウルマンとしての姿がここにある。
