フランス出身、NYを拠点にするシンガー/ベーシストの豊かな経歴
フランス生まれのシンガー/ベーシスト/プロデューサー、アディ・オアシスの初来日公演が2026年10月に東京と大阪のビルボードライブで開催される。〈初来日〉と謳ってはいるものの、正確には〈アディ・オアシス名義では初の来日〉で、かつてアデュリーンと名乗っていた2019年にも日本を訪れ、多くのオーディエンスを前にその歌声とベースプレイを披露している。
とはいえ、今回のビルボードライブ公演、そしてこの記事を通じて初めて彼女の存在を知ったという人もいるはずだ。まずは彼女のこれまでのキャリアを辿りながら、来日公演に向けて押さえておくべき作品や楽曲についても触れていきたいと思う。
文化的にも多様なパリ郊外で育ったアディは、幼い頃に児童合唱団に所属し、テレビなどにも出演していたという。10代になるとギターを手に取り、ライブ活動や作曲などをはじめ、独学で自らのスキルを高めていった。その後、音楽を生業にするため活動拠点をニューヨークへと移し、本格的にキャリアをスタートさせる。
渡米後、アディはミュージシャン仲間とともにザ・クラウド(The Crowd)というトリオを結成。ここでは主にボーカルを務めていた彼女だが、とあるライブで急遽ベースを担当したことを機に、ベーシストとしての才能も開花させていく。クラウド時代はアリシア・キーズあたりを想起させるソウルフルかつポップな歌唱が印象的で、現在のジャジーでスロウな雰囲気と比較するしてもかなり新鮮に感じられる。
ザ・クラウドを経たアディは、新たにニューディスコやハウスなどに振り切ったバンド、エスコート(Escort)でリードシンガーの座に就く。クラウド時代には持ち合わせていなかったファンクネスを纏った彼女の歌声を武器に、バンドは一定の成功を収める。ちなみに、ここで培ったファンキーなノリはアデュリーン名義でのソロアルバム『Adeline』(2018年)でも堪能することができる。
2020年から2021年にかけて新型コロナの影響によりライブ活動が制限されてしまったアディは、作曲やレコーディングに注力しつつ、他のアーティストとも意欲的にコラボしていく。そのひとつの成果として、米シンガー/ラッパーのカマウウのシングル“MANGO”(2020年)に客演、同曲はスマッシュヒットを記録した。これによって多くのリスナーの目に留まるようになった彼女は、2021年に名義をアディ・オアシスへと変更し、ネオソウルやスムースソウルに寄ったEP『Adi Oasis』を発表した。このEPに収録されている“Mystic Lover”はライブでも頻繁にプレイされているので、来日前にチェックしておいてほしい。