稀代のジャズピアニストがビルボードライブ東京に初登場
ジャズともプログレッシブロックとも、あるいは聖歌とも共鳴するアルメニア出身のピアニスト/作曲家、ティグラン・ハマシアンが紡ぐ音楽は、既存のジャンルをやすやすと飛び越えていく。そんな稀代の即興家が2026年10月18日(日)、ビルボードライブ東京に初登場する。
1987年にアルメニアのギュムリで生まれたティグラン・ハマシアン。3歳でピアノを始め、10代で〈モントルー・ジャズ・フェスティバル〉のピアノコンペティションを制覇、2006年には〈セロニアス・モンク国際ジャズ・ピアノ・コンペティション(現ハービー・ハンコック国際ジャズ・コンペティション)〉でも優勝するなど輝かしいキャリアを築いてきた。また、10代前半に出会ったチック・コリアから高い評価を受け、その影響もあってかティグランの存在は欧米諸国へも知れわたっていった。
ティグランについてはハービー・ハンコックやブラッド・メルドーらもその音楽性に太鼓判を押す一方、日本ではくるりの岸田繁が彼のファンとして知られていて、2023年にはくるり主催の〈京都音楽博覧会〉に出演した。そのほか、オダギリジョーが監督を務めた映画「ある船頭の話」(2019年)の音楽を手がけるなど、日本と繋がりを持つアーティストでもある。
そんな彼の最新のビジョンが作品化されたのが、今年2月にリリースされた大作『Manifeste』だ。本作では前作『The Bird Of A Thousand Voices』(2024年)で見せた壮大なスケール感を引き継ぎつつ、より多層的で実験的なアプローチが試みられている。神秘的な室内合唱の響きから、繊細で美しいアコースティックピアノのタッチ、さらにはモジュラーシンセやデジタルなドラムプログラミングにいたるまで、エレクトロニクスとオーガニックな残響が高度に融合し、ティグランが現代社会の混沌や歴史の重みと対峙しながら紡ぎ出した、まさに彼の音楽的〈マニフェスト〉そのものと言える作品に仕上がりだ。
では、10月のビルボードライブ東京では一体どのようなパフォーマンスが繰り広げられるのだろうか。直近の海外ツアーにおけるセットリストを参考に紐解くと、やはり新作である『Manifeste』のディープな世界観をダイレクトに体現する、極めて密度の高いステージになることが予想される。
最近ライブで幕開けを飾っている新作の表題曲“Manifeste”は、緻密に計算された変拍子のピアノのリフレインが印象的で、ライブでは一瞬にして会場の空気を心地よい緊迫感で満たすだろう。そこから強烈なグルーヴが炸裂する“Ultradance”、一転して郷愁を誘う美しい旋律が光る“Yerevan Sunrise”へと続く流れは、彼の作品の特徴でもある静と動のコントラストを鮮やかに体現しているようだ。