Z世代のティーンによるパンク・バンド――そんな固定化されたイメージからはもう逃げ出せ! 伝説的な図書館ライヴから5年、メジャー・デビューを果たした4人の現在地はここにあるよ!
〈Gotta get out, gotta get out / Outta this crowd, all the same sounds / Gotta get out(逃げ出さないと、逃げ出さないと!/この一群から、みんな同じ音を鳴らしてる/逃げ出さなくちゃ!)〉――メンバー全員がヴォーカルを兼任するLA発パンク・ロック・バンド、リンダ・リンダズのメジャー・デビュー・アルバム『GOTTA GET OUT』は、そんなふうに歌い出す“Gotta Get Out”で始まる。その〈Gotta get out〉という言葉が彼女たちにとって、どれだけ切実なものだったのか。それはアルバムに収録の12曲の中で最初に書いたのが“Gotta Get Out”であったことに加え、その言葉がそのまま曲名のみならず、アルバム・タイトルになったことからも窺える。
表舞台に登場してきたとき、まだ小中高生だったZ世代の4人が見せた音楽に対するイノセントかつピュアな姿が世界中のロック・ファンを虜にしたことは、多くの人たちが知るところだが、その後、ローリング・ストーンズやグリーン・デイといった超ビッグネームと同じステージに立つことも含め、さまざまな経験を積むなかで、彼女たちがミュージシャンであることにどんどん自覚的になっていき、バンドとして意識的に成長を求めたとしても全然不思議ではない。前述の〈Gotta get out〉という言葉は、そんな欲求が加速度的に勢いを増していく活動の中で焦燥感とない混ぜになったものなんじゃないかと想像を膨らませてみたのだが、アルバムの1曲目を飾るその“Gotta Get Out”は、いきなり鳴るシンセのリフと80sニューウェイヴ・サウンドが早速、成長を求めるバンドの新境地を印象づける。ブロンディとトーキング・ヘッズのサウンドが同曲のインスピレーションになっているそうだ。
その“Gotta Get Out”ともう1曲、パーカッションも使ってファンキーに迫るエレポップ“High Horse”を聴けば、シンセの音色とダンス・ビートの導入が今回のテーマのひとつだったことが想像できる。その“High Horse”はフレネミーに対する(?)辛辣な歌詞も含め、メンバーたちにとってこれまででいちばんのお気に入りの曲になったそうだ。
その他、サウンド面のインスピレーションがキュアーだったという“Everybody Told Me”、悲しいヴァイブを曲に落とし込むことに挑戦した“See You Next Time”というバラードからは、曲に滲むメランコリーと共に成熟も感じられる。また、リード・シングルだった“Burning Out”をはじめ、従来の彼女たちらしいポップ・パンク~パワー・ポップ系の曲も煌めきと共に鳴らした空間系のギター・サウンドで、キュアーがインスピレーションだったという前述のエピソードも頷ける洗練を感じさせ、そんなところにも成長を聴き取ることができそうだ。
もっとも、スラッジ・メタルなんて言ってみたい“Blood On Our Hands”、2ビートのハードコア・ナンバー“Break”、威勢のいいギャング・ヴォーカルに加えてオルガンも鳴らしたラモーン・パンクの“OK”のような曲も収録されているから、メジャー・デビューだからといって、闇雲に成長や洗練を求めたわけでないことは明らかだ。
そして、“Closer”では念願がついに叶い、エモの女王と謳われるヘイリー・ウィリアムス(パラモア)との共演が実現している。彼女への憧れをエモーショナルな曲調に滲ませながら、ロック・バンドとしてのスケールアップをアピールした“Closer”は話題性も含め、アルバムのハイライトと言ってもいい。
もしかしたら、デビュー当時の彼女たちの天真爛漫さを尊いものと考えるあまり、バンドが変わってしまったと思う人もいるかもしれない。しかし、最年長メンバーでさえまだ21歳の若いバンドだ。逆に何も変わらなかったとしたら、むしろ停滞と考えるべきだろう。まずはバンドの挑戦の証とも言える多彩さを持つ全12曲を聴きながら、さらにひと皮むけたリンダ・リンダズを祝福することが、『GOTTA GET OUT』の正しい聴き方なのだと思う。
リンダ・リンダズの作品。
左から、2022年作『Growing Up』、2024年作『No Obligation』(共にEpitaph)
左から、ヘイリー・ウィリアムズの2025年作『Ego Death At A Bachelorette Party』(Post Atlantic)、リンダ・リンダズが参加した2024年のトリビュート盤『Everyone's Getting Involved: A Tribute To Talking Heads' Stop Making Sense』(A24)、メンバーが参加したJジェローム87のニュー・アルバム『The Canyon』(Mushroom)
