この書で野口氏は20世紀最高の指揮者フルトヴェングラーが残した録音から何を聴きとり、その精神をどのように現代に生かすかを繰り返し問いかける。そして彼の思想がより直接的に示された著作や作品への注目を促す。野口氏は自ら研究会を立ち上げ、彼の著作にある哲学的な言辞からその思想を読み説き、彼の作品の日本初演を数多く手がけた。そして佐村河内問題に代表されるマスコミが作り上げた虚像には徹底して戦いを挑む。「比較でなく没頭せよ、愛せよ!」この巨匠の言葉を胸に、音楽家として、著述家として行動し続ける彼の生きざまや主張がこの書に集約されている。