スピネッタの〈ペスカド・ラビオソ〉、チャーリー・ガルシアの〈ラ・マクイナ・ デ・ヘーサー・パジャロス〉と70年代アルゼンチンを代表するロック・グループを渡り歩いたピアニスト、カルロス・クタイアによる03年発表の大傑作タンゴ・ジャズ。味わい深く情景描写に秀でたピアノが内に秘めた炎を情念的に歌い上げるリリアーナ・バリオスの歌唱に陰影をつけいっそう際立たせる。無理にドラマチックに仕立てず、ひとのもつ複雑で繊細な感情を丁寧にときに大胆に音像化するベテランならではの作品。これがライヴさながらの一発録りというからその集中力には恐れ入る。ここ10年の中で確実に最高峰のタンゴ作。