現役最強リーダー&バンドネオン奏者が仕掛ける感動装置に、要注意!

 1980年代末以降、世界規模で高まったタンゴ再燃現象を、身をもって体感してきたバンドネオン奏者は、43歳。早熟の天才は、十代で初来日。すでに10度の日本公演を経験している。これまでのキャリアでアルゼンチン・タンゴ界最後の巨星たちと堂々渡り合い、先達より未来を託された、現役最強のマエストロだ。満を持して2013年結成、自身の名を冠す初の六重奏団とともに、目下全国ツアー中。そのステージに仕掛けられた、恐るべき“感動の起動装置”の巧妙さに舌を巻く。さすが、リバイバルブームを先導した「タンゴ・アルヘンティーノ」後期のセステート・マジョールをはじめ、「フォーエバー・タンゴ」「タンゴ・パッション」と名だたるショーを牽引し続けてきた男! バンドネオン・ソリストとしてのアピール・タイミングに加え、各楽器ソロ・パートの配分、卓越した編曲・選曲構成術でリーダーシップを発揮する。そんなオラシオ・ロモ・セステートの来日記念盤は、まごうかたなき“最新タンゴの結晶”と断言していい快作だ。

オラシオ・ロモ・セステート『夜明けのタンゴ』(LATINA)ジャケット画像
 

 緩急つけて熱情を演出する、彼ら不動のオープニングは、軽妙かつ優美な《サルードス》。典雅の極み〈可愛いアザミ》に、ピアソラ以降をしかと提示する 《ガジョ・シエゴ》の粋な創意。フォルクローレ版ミロンガで《巡礼》を採り上げる懐の深さ。ロモ書き下ろし 《夜明けの道》、イネス・クエージョの歌2曲を挟みつつ、いよいよ核心部へ。圧巻の凄絶さで迫る《コントラバヘアンド》。コントラバスとピアノは、ロモ率いる現セステート・マジョールのメンバーだけに相性抜群。ヴァイオリンのトップも、ショーで常に相まみえる仲間。マルコーニ作《ときが満ちて》の珍しいカヴァーが、これまた秀逸。終幕が《失われた小鳥たち》の一節を配す 《アディオス・ノニーノ》とくれば、もう感無量。近年稀にみるハイレベルなタンゴ・ステージは、3月8日まで全国諸都市を巡演。さらに進化中の生演奏を見逃すのは、惜しいですぞ!

 


LIVE INFORMATION

ドラマチック・タンゴ「バンドネオンの匠」
○3/8(水) 18:00 開場/18:30 開演
出演:オラシオ・ロモ・セステート / イネス・クエージョ / シルビア&ガスパル / ビクトリア&リカルド / アグスティーナ&ウーゴ
会場:川崎市教育文化会館 他
http://tango.min-on.or.jp/2017/index.html