インタビュー

ジャム・シティ、衝撃与えた初作から3年経て放つ夢心地の甘いジャムにまみれた異形のシティー・ポップ盤

ジャム・シティ、衝撃与えた初作から3年経て放つ夢心地の甘いジャムにまみれた異形のシティー・ポップ盤

夢心地の甘いジャムにまみれた異形のシティー・ポップ!? とはいえ、真っ赤なフィルターを通して覗き込んだ街の様子は、どことなく奇妙に歪んでいる……

 いまや〈時代の顔〉ともいえるポジションにすっぽりと収まり、オシャレ感すら漂わせているのが、ボク・ボクエルヴィス1990率いるナイト・スラッグスだ。優良なタレントを豊富に抱えるレーベルから放たれる音源は、UKガラージグライムのようなベース・ミュージックから、ハウスやエレクトロなど、既存のスタイルやトレンドを引用しながらも、まるで世の中を嘲笑うかのように各々が飄々と斬新なサウンドを作り出している。そんなふうに鬼才たちがワラワラと集うなかで頭角を現し、レーベルの出世頭となったジャム・シティことジャック・レイサム。2012年にリリースした初のアルバム『Classical Curves』では、粗削りなインダストリアル風味の近未来ガラージを作り上げてダンスフロアのみならずインディー・ロック方面にも衝撃をもたらし、そのインパクトを世界中へと波及した。あれから3年、満を持してセカンド・アルバムの登場である。このしばしのブランクに、ケレラジョアキムカインドネスによるプロジェクト=エヴリワンのプロデュースに加え、そのカインドネスやスレイ・ベルズのリミックス、〈Boiler Room〉〈Resident Advisor〉でDJを披露するなど人気者らしく多忙を極めており、アルバム制作にも思った以上に時間を要したそうだ。

 「この期間というのは僕の人生にとって大事な時期だった。構想をまとめて、音楽で自分がどんなことをやりたいのかを明確にしていく期間だったんだ」。

JAM CITY Dream A Garden Night Slugs/BEAT(2015)

 そうした過程を経て完成した『Dream A Garden』では、前作の備えていた都会の荒涼とした風景や性急さ、破天荒な展開が鳴りを潜めている。リヴァーヴやエコーを効かせ、いわゆるインディーR&Bアンビエント寄りの要素に比重が置かれた、穏やかな〈シティー・ポップ〉作品という印象だ。

 「アルバム制作中は、曲に深くハマり込んでトランス状態のようになるんだ。曲の多くは、夢のような状態を想像して作られた。だからオーヴァーダビングをたくさんしている。オーヴァーダブにオーヴァーダブを重ねて音のレイヤーをあまりにも積みすぎると、その重みに耐えきれなくなって音に亀裂が入る。音が飽和状態になり、ヘヴィーになるんだ。この現象がアルバムのほぼ全曲で起こったよ。曲に深くハマリ込みすぎて、自分で抜け出さなければいけなくなる(笑)」。

 なるほど、そんな発言を聞けばサイケデリックで夢見心地な仕上がりにも納得させられる(笑)。ただ、以下の変化について語る姿は笑いなしの真摯なものだ。

 「僕たちの世界を取り巻く状況に対して、反発したかった。そして、僕たちが住む、時には不幸で不親切な世界に、愛、思いやり、希望といった温かみのあるメッセージを伝えたかった」と。今回の彼はさまざまな問いに対して〈反発〉という言葉を使っているのが印象的で、それは政治や世界情勢に対する彼のスタンスであり、こんなにも優しくメランコリックな音を響かせているのはその反動なのだろう。またそのメッセージを届けたいという思いは、ヴォーカル曲の増加にも繋がったようだ。そしてこのメロウな方向性の実現に貢献したのが、他でもないボク・ボクである。

 「今回のアルバムもアレックス(ボク・ボク)がミックスをしてくれた。僕がいままで作ったレコードはすべて彼がミックスを手伝ってくれている。彼はサウンドを音波レヴェルで理解している、業界一の耳の持ち主だよ。彼なしにこのアルバムを完成させることはできなかった。今回のアルバムが音響的にどう響けばいいのか、ということを彼はちゃんと理解してくれた。温かみがあって、同時にナイト・スラッグズのレコードすべてにあるような、粗削りでロウエンドなサウンドに仕上げてくれたよ」。

 厳しい現実を乗り越えるべく彼が用意してくれた〈夢見る庭〉。この作品から安らぎや平穏を得て、夢を見てみませんか? 

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