北野監督作品のサントラを手掛けるのは4度目となる鈴木慶一
そのユニークなサウンドは「任侠アルゼンチン・エレクトロニカ」

 

(C)2015「龍三と七人の子分たち」製作委員会

 

 『アウトレイジ』シリーズでヤクザ映画の新境地を拓いた北野武監督が、今度は元ヤクザのジジイたちを題材にしたエンタテインメントを作り上げた。新作『龍三と七人の子分たち』は、引退したヤクザの親分、龍三(藤竜也)が、かつての仲間たちと新しい組を立ち上げて詐欺集団に闘いを挑む。〈北野武〉というより〈ビートたけし〉の笑いのエッセンスが詰まった本作で、サントラを手掛けたのは『アウトレイジ ビヨンド』に続いて鈴木慶一。コメディタッチでありながら、哀愁漂うバンドネオンの音色が印象的な音楽だ。 

鈴木慶一 映画「龍三と七人の子分たち」オリジナルサウンドトラック DREAMUSIC(2015)

  「北野監督から、とにかく物悲しく、ということは言われたね。ブエノスアイレスあたりの裏町で、バンドネオンが物悲しく流れているようなイメージだって。コメディタッチだけど、ジイさんたちが暴れようとするのって物悲しいところがあるじゃない。物語の裏側にある物悲しさを音楽で浮かび上がらせてほしい、ということなんじゃないかな」

 バンドネオンをフィーチャーしたエレクトロニックな音作り。さらに演歌的なテイストも意識したという不思議なサウンドは、鈴木いわく「任侠アルゼンチン・エレクトロニカ」!〈物悲しさ〉をキーワードにしつつ、そこには遊び心も散りばめられている。

 「(龍三の子分の)〈早撃ちのマック〉はガンマンだからテーマ曲はマカロニウェスタン風。〈ステッキのイチゾウ〉はステッキに刀を仕込んでるんでテーマ曲には『座頭市』の音源を利用している。バスのカーチェイス・シーンに流れる曲は間抜けさを出したかったんで、ガムランとバンドネオンの掛け合いにした。あと、映画で一瞬流れるアメリカ国歌のバックでは、ジミヘンみたいにギターでアメリカ国歌を弾いている。そういうことに命懸けになるんだよ(笑)」

 『座頭市』以来、鈴木が手掛けた北野作品は本作で4作目となるが、音楽的というより音響的な鈴木のサウンドは北野作品の醒めた質感にぴったりあっている。鈴木から見た北野監督の音楽に対するこだわりとは、一体どんなものなのか。

 「監督にとっては、映像も、音楽も、音響も、セリフも、すべて並列な存在だと思うね。それが全部入って初めて監督の頭の中のイメージがわかる。音楽でドラマを盛り上げるとか、そういうハリウッド的な考えではないんだと思う。そこは、私のサントラに対する考え方と同じなんだな」

 北野武×鈴木慶一、二人の異才によるコラボレートは、デヴィッド・フィンチャー監督とサントラを手掛けるトレント・レズナーナイン・インチ・ネイルズ)の関係を思わせたりも。そんな感想を伝えると「そう感じてくれたなら、嬉しいですね」とニコリ。『龍三と七人の子分たち』のサントラの面白さは、間違いなく世界基準だ。

 

MOVIE INFORMATION

映画『龍三と七人の子分たち』

監督・脚本・編集:北野武
音楽:鈴木慶一
出演:藤竜也/近藤正臣中尾彬品川徹樋浦勉伊藤幸純吉澤健小野寺昭安田顕矢島健一下條アトム勝村政信萬田久子/ビートたけし/他
配給:ワーナー・ブラザース映画/オフィス北野 (2015年 日本 111分)

◎4/25(土)全国ロードショー!

http://www.ryuzo7.jp/