ウィントン・マルサリス登場から現在へと根深く続くジャズ・ジャーナリズムの偏執(=ジャズへのイメージの偏執)が起こったのは、断言してしまえば〈技術論としてのジャズ〉を〈思想〉へと無理矢理繋げたジャーナリストが大半だったため。従来の権威たちが無視し続けてきた〈ジャズを中心に繋がり広がる多彩な音楽〉を、本著ではロバート・グラスパーをキーワードに鋭くしなやかに読み取っていく。望むのは、ここが終着地点ではないと多くの人が認識すること。これは正確にはディスクガイドではなく豊潤な音楽言語の新たな辞書であり、意識次第でまだまだ世界を広げる可能性を秘めているのだから。