最初のレコード『Part One』の発表が95年なので、実は今年がデビュー20周年にあたるハーバート。こちらのディスクガイドで紹介している通りの多作家なのだが(現在は入手困難なものも多い)、それに加えて他アーティストとの仕事の量も相当なものだ。もっとも有名なのは、『Vespertine』のプロダクションに参加して以降、たびたび顔を合わせているビョークとの絡みだろう。彼女のエレクトロニック化に大きく貢献したのは間違いない。
他にもビッグバンド作品に参加していたジェイミー・リデルや、奥さんのダニ・シシリアーノ、そしてパトリック・ウルフの作品にプロデュースで参加。自身が運営するレーベル=アクシデンタルの作品にも関わることが多く、ヘジラやインヴィジブルといったバンドものに加え、モロコ時代から親交のあるロイシン・マーフィーの初ソロ作では全曲を手掛けている。昨年に実現したマウス・オン・マーズとの共作も、互いの実験精神をフロア仕様のビートに置換していて印象的だった。
だが、それ以上に引く手数多なのがリミックス仕事。跳ね系のグルーヴとディープな感触が合わさった特徴的なサウンドには支持者が多く、スーパー・ファーリー・アニマルズから電気グルーヴ、相対性理論までがそのトリコに。『Bodily Functions』でのブレイク以降はクラブ・ジャズ界隈の仕事も一気に増え、ロイ・エアーズやオスカー・ブラウンJrといった御大の楽曲にもメスを入れている。近年もダニの声をネタ使いしたDJコーツェの変調ディープ・ミニマル“Magical Boy”をお返しとばかりにリミックス(というかほぼカヴァー)したり、ダミアン・ラザルス率いるクロスタウン・レベルズの音源をポップなハウス調に仕立てたりと、『The Shakes』と地続きで楽しめそうな仕事も多いので、チェックをお忘れなく!