イランジェロ製の冒頭曲“Time Travel”から週末的な幻想旅行に吸い込まれる——繊細な歌唱とアーティーな佇まいで耳目を惹いたマンチェの俊才が、長い仕込みを経てやっとフル・アルバムを発表した。全体のトーンは憧れのプリンスに由来する美意識とミゲルらの現代的なチルスケープを英国的に折衷した感じで、ファレルによるMPG味のミルフィーユ・ソウル“Look Up”ではエル・デバージ、“Pass It On”では初期ニーヨの残像も揺らめかせ、表題曲ではバーナード・バトラーがナイル・ロジャースを気取るなど、各曲の表情はそれ以上に多彩だ。〈Sounds Of 2011〉から時間が経ったのは残念だが、その間に生じた多様な流れに磨かれた美しいフォルムは、このタイミングだからこそ彫り出されたものである。傑作!