きっかけは同世代! 涼しい顔してヒップホップの新時代を悠然と泳ぐ噂の2人が、フレッシュな遊び場でゆるりとジョイントしたよ!

  5lackを介してそれぞれの存在を知ったというArμ-2とKid Fresino。ヒップホップ周辺のシーンにはまだ少ない93年生まれ同士ということが、彼らを共作に向かわせるきっかけとなった。Arμ-2Aのアルバムとしてこのほど登場した『Backward Decision for Kid Fresino』は、お互いをよく知るより先に制作がスタートしたという。

 「タメの奴ってホントfebb(Fla$hBackS)以外知らないぐらいの勢いなので、すぐやろうって思ったんですよね、Arμ-2のトラックは聴いてなかったけど」(Kid Fresino)。

 「紹介されたその日に帰ってすぐ音源交換して聴いたら(Fresinoの)ラップがすごいカッコ良かったから、必然的にカッコイイものが出来ると思った」(Arμ-2)。

Arμ-2 『Backward Decision for Kid Fresino』 Pヴァイン(2014)

 「俺のDJをArμ-2は普通に聴くに耐えないと思う」(Fresino)といまは笑って会話を交わす互いの音楽センスの違いに、制作では、途中難航したこともあったという。

 「僕はただ自然に生活のなかで音楽を作ってるだけなので、リズムのヨレとかにしてもそうだし、変な音のトラックとかも出来上がってしまうんですね。それは人によっては抽象的でわかりにくいものに聴こえてしまうこともあるので、わかりやすいトラックが欲しいって言われて、今回は全曲サンプリングをメインにキッチリ作りました。」(Arμ-2)。

 「(Arμ-2のトラックは)下から上まで全部の音域が出てる感じがスゲエけど、ラップを乗せるのは難しかった。イケイケのトラックでやるなら感覚でできるし、淡々とレコーディングもできるけど、(今回は)ちゃんと捻り出さなきゃいけないっていうか。それで全部サンプリングでキャッチーなループを作ってもらって」(Fresino)。

 さまざまなアプローチを試みたというサウンドにあって、Arμ-2が「大きなキモ」と語るのは自身の歌やコーラス。それも含め随所にメロウなテイストも交え、折り重ねた繊細な音のレイヤーは、FresinoにとってFla$hBackSやソロでのシンプルな音作りとは勝手が違うものだったようだ。ソロ・アルバムでも絶大な信頼を置いたグループの盟友jjjの音を引き合いに、彼はArμ-2のビートでラップする際の意識の違いをこう語る。

「j(jjj)のトラックでやる時は勢いがある言葉しか出てこないし、そういうスタイルになるんですけど、今回はこういうトラックだからそのテンションに合わせたって感じ。Arμ-2が送ってきた曲とそのタイトルがバッチリだったらそれをモチーフにして(リリックを)書いたり、トラックの雰囲気に合わせて俺が曲のタイトルを付けて、それを元に書いてくみたいな」(Fresino)。

 Fresinoがほぼ唯一敬意を寄せるMCだというISSUGIを迎え、J・ディラばりのベースラインが曲を引っ張る“Radio Frequency On ISSUGI”。コズミックな残響が染み渡るサウンドに、街に根付いた視線を落とす“The BlueMan”。あるいはシタール使いの勢いあるトラックで、砂漠をモチーフにメタファーを広げる“Kuwait Bridge”——Fresinoが「Arμ-2が俺のアカペラを勝手に乗せたみたいなイメージ」と話せば、「Kid FresinoでArμ-2が遊びましたみたいなアルバム」とArμ-2が返す本作。いずれにとっても思いがけぬ出会いがこうして形になることこそ、フレッシュと言わずして何と言おうか。

 

▼関連作品

左から、5lackの2013年作『5-sence』(高田音楽制作事務所)、febbの2014年作『the season』(WDsounds/Pヴァイン)、ISSUGI from MONJUの2013年作『EARR』(DOGEAR/Pヴァイン)
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 ここではArμ-2とKid Fresinoの関連作を紹介! SoundCloudなどで音源を公開していたArμ-2は2013年5月、5lackとOLIVE OILのコラボ作『50』のリミックス盤『50 Remixies』(高田音楽制作事務所×OILWORKS)への参加で名を上げ、彼と同じ93年生まれのMC、NF Zesshoの初作『Natural Freaks』(Prefabric)などにもトラックを提供。10月にはコズミックなビートが詰まった初ソロ作『Aμ』(OILWORKS)を完成させます。一方のFresinoはfebbとjjjとのユニット、Fla$hBackSの初作『FL$8KS』(FL$Nasion)を2013年2月に発表して注目の存在に。そこではビートメイクに専念していましたが、続く5月のソロ・アルバム『Horseman’s Scheme』(DOGEAR)ではラップ歴が数か月とは思えない軽妙なフロウを披露しています! *編集部
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