昭和歌謡とジャズ、フレンチ・ポップスなどの要素がこれほどまで魅惑的に融合した例は他にない、とリスナーたちを感嘆させた小島麻由美の初期作品『セシルのブルース』『二十歳の恋』『さよならセシル』。ガレージ感満点のスウィンギー・サウンドと気怠いエロスを感じさせる歌声のマッチングも絶妙なこれらのブルース集を、人は〈セシル3部作〉と呼ぶ。なかでも『二十歳の恋』が素晴らしく、チャド・ブレイクがミキシングを手掛けたトム・ウェイツ作品で見られるようなひしゃげた音像のなかに浮かぶ少女は、あまりに美しい。そんな3タイトルをまとめた4枚組『セシルの季節 La saison de Cecile 1995-1999』がデビュー20周年記念として作られた。裸んぼうの歌が聴ける大量のデモにもたまげる本作。表題に〈1999年〉とあるが、未完に終わった幻の4作目『愛のミラージュ』まで入っているからだ。完璧な3作品と比べれば欠けた部分も感じられるけど、世に出なかったことに対して恨みごとを言いたくなるほど良い。やっぱり小島麻由美に駄作はないんだよ。
4作目『My name is blue』など21世紀以降の4作品から本人が選んだベスト曲集。よりハードでアッパーな曲作りを行っていたことが見えると同時に、シンガーとしても成熟度がアップしていて、歌声が醸す色気がグンと上がっていたことも教えてくれる。
『スウィンギン・キャラバン』から4年のブランクを経て届いた、レーベル移籍後の第1弾。ドラムがASA-CHANGから元デキシード・ザ・エモンズのハッチに代わったことが多分に影響し、ポップで開放的なビートが小島の歌声をヤンチャに弾けさせている。
森山加代子やスパイダーズのカヴァーも楽しい6曲入りの『渚にて』から間を空けず発表された9作目にして、現時点での最新作。カッコイイ小島麻由美を映し出すロック曲が多めで、カジヒデキが弾くブリブリしたエレキ・ベース(初導入)もサウンドに躍動感を与えている。