本作を聴いて1955年のニューポートジャズ祭に関わる逸話が彼のジャズ史的な印象を一新させてくれる。今回、今まで一部が発表されていた演奏が全て聴けるようになった。マイルスに先行するジャズ・ジャイアンツ達の登場の後、まるで九重親方と貴乃花のあの一戦のように、この日を境にしてマイルスは帝王に上り詰めていく。さらにコンサートが終わるとさっさと会場を後にする彼が最後まで観客の反応を確かめた翌年、エレクトリック・マイルスの時代が始まった。記録の向こうにある様々な逸話がこのアルバムを飾っている。フュージョン再発見の今の時代、電気楽器使用の呪縛を解いたマイルスの演奏はあまりにも大きい。