COLUMN

〈あの花〉スタッフが制作&ミトが音楽担当、〈本当の気持ち〉と向き合う高校生の青春群像劇「心が叫びたがってるんだ。」

(C)KOKOSAKE PROJECT

 

 人間は誰しも、もやもやした気持ちをどこかに抱えているものだ。それは例えば、人間関係の悩みだったり、理想と現実とのギャップだったり、後悔や自責の念だったり……。ましてや思春期ともなると、自分自身の感情でさえもてあまし、本当の気持ちがわからなくなってしまうことも多いだろう。今秋に公開される映画「心が叫びたがってるんだ。」は、そんな葛藤と向き合う高校生たちの姿を描いた群像劇だ。

 物語の軸となるのは、4人のクラスメイトたち。幼い頃にとある出来事が原因で〈玉子の妖精〉に言葉を封印されてしまい、それ以来喋ることができなくなった少女、本音を言わずやる気も見せない少年、怪我で挫折してやさぐれた野球部の元エース、恋に悩むチアリーダー部の優等生――それぞれ心に傷を抱えている彼らが、学校で〈地域ふれあい交流会〉の実行委員に任命され、出し物でミュージカルを行うことになる。クラスの誰も乗り気ではなく揉めるなか、喋らないはずの少女が「わたしは歌うよ!」と声に出して宣言し、〈伝えたかった本当の気持ち〉を歌おうとするが――。

 若者たちの惑いと真っ直ぐな思いをオリジナル・ストーリーで描く本作。その制作スタッフとして集結したのは、TVアニメ「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」(2011年)及びその劇場版(2013年)を手掛けた、長井龍雪(監督)、岡田麿里(脚本)、田中将賀(キャラクターデザイン)の3人だ。そもそもは、竹宮ゆゆこのライトノベルを原作としたTV作品「とらドラ!」(2008年)に揃って参加し、友情と恋愛感情の間を揺れ動く高校生たちの日常をカタルシスたっぷりに展開して評価を得たこのトリオ。続くオリジナル作品〈あの花〉では、女の子の幽霊を中心に絆を取り戻していく幼馴染たちの成長物語を、繊細な演出でドラマティックに描写してヒットに結び付けた。そこでの、〈幼馴染の死〉という重いテーマを扱いながらも、どこか爽やかさを感じさせる作風は、きっと今作にも引き継がれているはずだ。

 そして音楽はクラムボンミトが担当。CM映像で使われているベートーヴェン〈悲愴〉に日本語詞を付けた楽曲は、清浦夏実TWEEDEES)をヴォーカルに迎えた、ピアノの柔らかな響きがどこか懐かしさを感じさせるもので、劇伴も切ない青春ストーリーに優しく寄り添うサウンドが期待できそう。物語の鍵となるミュージカルでは、“Over The Rainbow”や“Around The World”といった定番曲も使われるので、その耳馴染みのある旋律が心の琴線を刺激することだろう。

 悩みの尽きない日々を生きる、すべての人の共感を得るであろうこの映画。あなたも、自分の思いを懸命に叫ぼうとする4人の物語に触れることで、心の奥底にしまい込んだ〈本当の気持ち〉を見つけることができるはずだ。

 

(C)KOKOSAKE PROJECT

 

原作/超平和バスターズ
監督/長井龍雪
脚本/岡田麿里
キャラクターデザイン・総作画監督/田中将賀
音楽/ミト(クラムボン)
制作/A-1 Pictures 
キャスト/水瀬いのり内山昂輝雨宮 天細谷佳正ほか
9月19日より 全国公開(配給/アニプレックス)

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