〈もし自分たちがモータウンのグループだったら……〉―!!!があれこれ妄想膨らませたダーティでロウな新作『As If』を語る

!!! 『As If』 Pt.1

いろいろなモノになりきって、あれこれ妄想を膨らませながらサウンドを組み立てていったら、サルも大興奮のダンス・アルバムが出来ちゃった!!!

　95年の結成から今年で20年。生のアンサンブルに裏打ちされた圧倒的なグルーヴと共に、地元NYの馬鹿げたダンス規制法に対する憤りを名曲“Me And Giuliani Down By The School Yard（A True Story）”（2003年）に込め、見事ブレイクスルーを果たした最強のライヴ・バンド、!!!。そのフロントマンであるニック・オファー（ヴォーカル）は、前作『Thr!!!er』から2年半ぶりとなる今回のニュー・アルバム『As If』越しに、様変わりした現在のNYシーンをどう見ているのか?

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「2000年代はディスコだったけど、いまNYで盛り上がっているのはハウス・ミュージックだよ。それも90年代っぽいサウンド、シカゴ・ハウスとかデトロイト・テクノとかに影響されたようなものだね。そのへんの音では〈Dope Jams〉のパーティーがいまだに大好きだし、最近行ったL.I.E.S.主催のパーティーも最高だったよ」。

　ハウスのロウなグルーヴが新たな躍動感をもたらしている、全世界的なシーンの流れに呼応したNYのダンス・ミュージック最前線。ロウハウスの先駆的なレーベルであるL.I.E.S.や、世界中のハウスDJから絶大な支持を集めるレコード・ショップ（とその店内で行われる同名パーティー）〈Dope Jams〉、地下ハウスのニューヒーローであるレヴォン・ヴィンセントらが発信する、街の新たなサウンドトラックに触発されながら、!!!もまた前へ前へとその歩みを進めている。かつてサンプラーとドラム・マシーンによるディスコの再構築がハウスを生み出したように、メンバーはさまざまな制作ツールを内包した音楽ソフト〈Ableton Live〉を用い、2015年のグルーヴを作り上げることに成功。

「もちろん、アルバムのエキサイティングな部分の多くはジャム・セッションから生まれたんだけど、今回は〈Ableton〉を活かしてより多くのサンプルを使ったし、さまざまな音素材も用いたよ。〈もし自分たちがモータウンのグループだったら……〉〈90年代にハウスのレコードを作っていたら……〉と、コンピューターの前で妄想しながら、俺とラファエル（・コーエン、マルチ・プレイヤー）は部屋にこもって40曲のデモを作ったんだ。そして、そのうちの20曲をバンドで録音した後、みんなで票を取って、さらに11曲に絞ったこともあり、ヴァラエティー豊かなサウンドがアルバムに凝縮されたと思うよ」。

　引き続き盟友のジム・イーノ（スプーン）も一部でプロデュースを担当しているが、今回バンドががっちりタッグを組んだのは前作のキラー・トラック“Slyd”を手掛けたパトリック・フォード。さらにビーチ・ハウス『Teen Dream』やフューチャー・アイランド『Singles』を手掛けたクリス・コーディが、ドアーズやスライ・ストーンのホーム・スタジオであるLAの名門、サンセット・サウンドで入念なミックスを施し、会心の一枚がここに完成した。