(左から)avengers in sci-fi・木幡太郎、Yasei Collective・斎藤拓郎

 

Mikikiブログ〈ヤセイの洋楽ハンティング〉でお馴染みのYasei Collectiveが、自身のレーベル=Thursday Clubからの初作品となるニュー・シングル“radiotooth”をリリース! Mikikiではこれを記念し、ヤセイブログのスピンオフ企画として各メンバーをフィーチャーした短期集中対談連載〈ヤセイの同業ハンティング〉をスタートしています。メンバーそれぞれがいまバンドマンとして&同じ楽器を演奏するミュージシャン(同業者)として尊敬する人たちを招き、あんなことやこんなことをディープに掘り下げていく全4回!

その第3弾は、Yasei Collectiveの斎藤拓郎と、avengers in sci-fiの木幡太郎によるギタリスト対談です! ギターの他にもヴォーカルを取り、シンセサイザーも担当する両者は、揃って〈ギタリストっぽくないギタリスト〉と自称する似たもの同士。〈こういう話はお互いでしかできない〉という機材にまつわるディープな話や、プレイヤーとしての音楽観や今後の展望など、たっぷりと語ってもらいました!

〈ヤセイの同業ハンティング〉
★Vol.1 別所和洋(Yasei Collecitive)×芹澤優真(SPECIAL OTHERS)はこちら
★Vol.2 松下マサナオ(Yasei Collective)×伊藤大助(クラムボン)はこちら

Yasei Collective radiotooth Thursday Club(2015)

 

工夫のなかからおもしろいものが生まれる

――そもそものお2人の関係性は? また、斎藤さんは今回なぜ木幡さんと話してみたいと思ったのでしょうか?

斎藤拓郎(Yasei Collective)「avengers in sci-fiと初めて共演したのは、去年11月に大阪・BIGCATで行われた〈JAPAN CIRCUIT〉という、アべンズ(avengeres in sci-fi)とチャットモンチー、Yasei Collectiveが出演したイヴェントでした。その時初めてアべンズのライヴを生で観たんですけど、それ以前にスタジオ・ライヴの映像をYouTubeで観て。その時点で〈この人たちのこの機材の量はなんなんだろう〉と(笑)。当日もライヴのセッティングを見たらやっぱり〈なんだこりゃ(笑)〉って。ライヴも素晴らしくて、打ち上げでちょっと話をさせてもらいました。僕は普通のギタリストっぽいギタリストじゃないので、他のギタリストの先輩とかとは共通する話題があまりなかったんですが、太郎さんの場合は初めて〈まさしく同じスタイルの先輩だ!〉と思って(笑)」

――あのスタイルというか、ギターもやってシンセもやって、さらにヴォコーダーを使ってヴォーカルも取るという点で、合う人はまずなかなかいないですよね。

斎藤「見つけた!感がありましたね(笑)」

――木幡さんもその時初めてヤセイを知ったんですか?

木幡太郎(avengers in sci-fi)「一番最初に知ったのは、新宿MARZのトイレにヤセイのフライヤーが貼ってあって。すげえ名前だなと思って、気にはなっていたんです。それでさっき話に出た〈JAPAN CIRCUIT〉で一緒になって、そこで初めて観ました。もう、それはそれはえらいカッコ良かった。僕らがその時にちょうど今年から始めた〈Unknown Tokyo〉という自主企画イヴェントの準備をしていて、呼ぶバンドがまだ決まってなかったので、その日の打ち上げで声を掛けました」

――そこで観て即決したんですか(笑)。ある意味〈自分と似たような人がいる〉というのも、気に掛かったポイントですか?

木幡「そうですね、まあいろいろ苦労もわかるというか。やっぱりギターって、いわゆるロック・ギターを弾いてるほうが楽しいんですね、気持ちいいので。エフェクターのかかり具合などを気にしながら弾くわけでしょ。すごく神経を使っているだろうなと。でもそういう見方を、僕はもう最近はしていなくて。やっぱりバンドを始めた頃はそういうところばかり目が行くんですが、流石に長く続けてきたので、そういう弾き方もしばらくしていないんです。まあそういう面でも(ヤセイは)すごくおもしろいなと思ったし、単純にバンドの音楽が最高でした。近年稀に見るような」

斎藤「恐縮です」

――ではその打ち上げで盛り上がった時は、そういった機材などのマニアックな話で盛り上がったんですか?

斎藤「何を話したかはそんなに覚えてないですね。チャットモンチーのサポートでツネさん(恒岡章)が来ていたので、〈Hi-STANDARDが好きなんです〉と伝えてツネさんと写真を撮ってもらったり」

Hi-STANDARDの99年作『MAKING THE ROAD』収録曲“Stay Gold”

 

木幡「ルーツの話をしたよね」

斎藤「〈普段どんな音楽聴いてるの?〉とか」

木幡「俺なんかてっきり、拓郎くんはジャズばっかり聴いてるのかなと思ってたけど」

斎藤「僕は中学生くらいからギターを始めたんですけど、その時はちょうどhideとハイスタの2つをコピーしていて。高校の時もずっとハイスタをやっていて、大学で初めてジャズとかを聴きはじめた感じですね」

――ジャズ研にいらしたんですよね。

斎藤「はい。僕が入っていたジャズ研はビッグバンド専門で、そこでフル・アコースティック・ギターで四つ切り※をずっとやっていて……そんな人間がなぜかヤセイに入って、エフェクターを使いはじめたんです(笑)」

※ビッグバンドでの演奏でよく使われる、4ビートで〈ジャッジャッジャッジャッ〉と刻むギターの奏法。カウント・ベイシー・アンド・ヒズ・オーケストラで活躍したギタリスト、フレディ・グリーンが有名

――ではヤセイに入ったことがきっかけで、いまのスタイルになったと。

斎藤「そうですね。ヤセイに入る前に、エフェクターを買ってみたんですよ、マルチ・エフェクターを。それがたまたまいろんなギター・エフェクトが入っていて」

――LINE 6ですか。

斎藤「はい。で、それがおもしろいのでどんどん使っていこうという話になって。とはいえ、元はJ-Popが大好きでした。ハイスタあたりはいまも聴いたりしますね」

――もちろんジャズも聴いているけど、そういったいわゆるJ-Popやロック的なものも聴いてきたし、ヤセイに入ってからはさらにさまざまな音楽を聴いていると。

斎藤「そうですね」

――いまのスタイルに至るうえでのルーツは何ですか?

斎藤「僕が作る曲は、メロディーは日本的な感じなんです。でもコードがリズム的なのは、ウェイン・クランツやマーク・ジュリアナ、二ーボディといったNY周辺のアーティストのエッセンスを抽出して混ぜているからかなと。そこらへんのジャズ界隈の人たちからの影響は大きいですね」

ニーボディ×Yasei Collectiveの2013年のライヴ映像 

 

――Mikikiのヤセイのブログでもウェイン・クランツは挙げられていましたね。木幡さんはそのあたりのアーティストは通っていますか?

木幡「一番最初はやっぱりハイスタをコピーしていました。僕は結構オルタナがルーツというか。ニルヴァーナとか、そのへんは本当に大好きでしたね。そこから周りの友達の影響でハイスタを聴くようになったんです。高校を卒業してからはエレクトロニカやポスト・ロックを聴くようになったり、テクノ的なものも含めていろいろ広がっていった感じです。ジャズに関して言うと、マイルス・デイヴィスやジョン・コルトレーンとか、そのあたりしかわからないですね」

――エフェクターや機材をたくさん扱ういまのスタイルは、どのあたりがルーツになりますか?

木幡「アンダーワールドやケミカル・ブラザーズ、ロック寄りのダンス・ミュージックなど、高校を卒業してからはそういうものがすごく好きだったので、シンセやシーケンサーのフレーズをギターでやりたかった。そういうところから機材が増えていった、というのはあるんですよね。もともと、いわゆるテクニカルなものは好きじゃなかったんです。テクニックを見せつけるというよりは、カート・コバーンのフレーズが好きだったので、サビでとにかく歪ませる、みたいな、そういうヴェクトルのことがしたかったというのがありました」

ケミカル・ブラザーズの2002年作『Come With Us』収録曲“The Test” 

 

――そこにダンス・ミュージックの要素も加わってきて、徐々にアベンズのスタイルになっていったと。そんな木幡さんから見て、ヤセイは特にどんなところが新鮮だったのでしょう?

木幡「第一印象は、現代のYMOだと思った(笑)。ジャズ寄りのアプローチをしていたことから、誤解があるかもしれないですけど知的なイメージを持ちましたね。そういう要素もありつつ、ヴォコーダーやシンセ・ベースを使ったポップさやカラフルな音色で楽しませてくれるバランス感。これを例えるならもうYMOしかいないなと思って」

――そういうものが混ざり合って、超越した存在になっているところがYMO的と。斎藤さんは、松下(マサナオ)さんら先輩のいるバンドに入ったわけですが、ヤセイはどうやって出来上がっていったのでしょう? 

斎藤「アメリカの音楽を〈これカッコイイよ〉といろいろ聴かされて。たぶん一番最初はラダーというキース・カーロック(ドラムス)やベースのティム(・ルフェーヴル)がやっている人力エレクトロ・バンドの影響を強く受けました。格好良いリズムの上にポップで、シンセを使ったメロディーが乗ってる曲を作りはじめたのがきっかけで、そこからジャズ寄りに行ったりロック寄りに行ったり。でも基本はシンセの曲が根本にあるので、いまはいろいろと寄り道してる感じです」

ラダーの2010年のライヴ映像

 

――ギターも演奏しつつ、シンセも担当するスタイルは初めから?

斎藤「そうですね、それは最初からそうだったと思います」

――ではヤセイの目から、アベンズはどのように見えているのでしょう?

斎藤「一番最初に目に付いたのは、やっぱり圧倒的な機材の量ですね。僕は普段、他のバンドが使っている機材をわざわざ見ないほうですが、アベンズの3人であの量は〈マジかよ〉って(笑)。そこから〈すげえなあ〉と思いはじめて、実際に音楽を聴かせてもらいました。“Citizen Song”はシーケンスを使っていますよね? あの曲は必要最低限のシーケンスで、サポートを入れるわけでもなく3人でできることをすべてやっているという姿勢がすごく格好良いですね」

――アベンズにとって、スリー・ピースというのはこだわりなのでしょうか?

木幡「バンドを始めた頃はありましたが、いまは特にないです。それにメンバーを増やすのが面倒臭いというのもあります(笑)。人数が増えたからといって何かが良くなるとは限らないし、逆に、何か工夫しなくても曲が成立したりもするんじゃないかと。3人だと、音の配置などある程度は試行錯誤しないといけないので、そういった工夫のなかからおもしろいものが生まれるのかな、と思ったりはします」
 


斉藤:うなづく

木幡「力強く〈うん〉と(笑)。ヤセイもそういうのはある?」

斎藤「そうですね。最終的には一人でいくつ音を出せるかという話になってくるので、4人で曲を作っていて、〈ここにもうひとつ何かが欲しい〉となれば、〈じゃあ誰ができる?〉となる。〈ここでは俺がこれをやってるから無理〉〈そこは君がそれをやってるから無理〉で、〈でもここをどうにか上手いことやればできるかも!〉みたいな。そこでまた新しいやり方を思いついたり」

木幡「シンセ・べースとベースを持ち替えたりね」

斎藤「そうですね」

木幡
「もし人数が10人いたら、そういった演奏スタイルにはならないというか」

――いる人数のなかで、配置や組み合わせをしていくと。

斎藤
「(その話には)共感しますよ」

木幡
「そうだね。苦しんでるな、楽しいだけじゃないだろうなと(笑)」

――先ほど言っていた、ギター・ソロをジャーン!と弾くのとはまた違う苦しみが(笑)。

木幡
「ギター・ソロを音を歪ませて弾くのは本当に気持ちいいんですよ。でもそれを良しとしない姿勢や変態性に共感します(笑)」

 

 

自分がギタリストという意識はない

――それぞれ、一番どういった部分にこだわったり、苦労したりしているのでしょうか?

斎藤
「とにかくその1曲のなかで何を、どのように使い分けるか。エフェクトの切り替えのことも考えつつパッチをいじっていったり」

木幡「俺の場合は、セクションごとに音色が違うことが多いから、もしAメロ、Bメロ、サビとあったら3回は音色が変わるし、もっと変えている時もある。その接続に時間がかかるので、スタジオに入ってから音が出るまでの準備が大変(笑)」

avengers in sci-fiの2012年作『Disc 4 The Seasons』収録曲“Yang 2”

 

斎藤「太郎さんは1人で何回線くらい使ってるんですか?」

木幡「とりあえず、ギターは3回線に分かれてる。アンプに行くやつと、アナログ・シンセ(MS-20)に入るラインと、Big MuffとかFuzz Factoryとかはアンプじゃなくラインで録っているので、その3つかな。自分の手元のミキサーに、アンプ以外はまとめていて、シンセもミキサーにまとめてるから、ギターだけでいえば一応2回線で送ってはいるんだけど。でも本当にパラレルになっていて、訳がわからないです(笑)」

斎藤「ヴォーカルは、地声用とヴォコーダー用で2回線ですか?」

木幡「カオス・パッドも別回線かな」

斎藤「カオス・パッドは何が入ってるんですか?」

木幡
「声が入ってる。スライスしたり。拓郎君も何か使ってるよね?」

斎藤「僕はカオシレーターですね」

木幡「カオシレーターってデカイやつ? それじゃあ俺と使ってるのが似てる」

斎藤
「太郎さんが使ってるのはヴォイス・ボックスで、僕が使っているのはV256というヴォコーダーなんですよ」

木幡「同じ系列というか、俺のやつの新しい版みたいな?」

斎藤「そうですね、ヴォイス・ボックスの次に出たやつです」
 


――斎藤さんは、セッティングに関しての苦労はありますか?

斎藤
「マルチ・エフェクターのパッチ、カオシレーターやサンプラーも合わせて、全部でいくつ音の種類があるか数えたんですけど、マルチ・エフェクターだけで100種類以上、サンプラーも合わせたら200種類以上あって。カオシレーターやパッチも入れたら、全部で250くらいになって、自分でも大変だなぁと(笑)。たまに間違えるんですけどね(笑)」

――えっ! それだけの音色をすべて使っているんですか?

斎藤
「そうなんです。そこがまあ大変といえば大変な部分です。演奏中も常に〈次はこのパッチだ〉というのが頭にあって、エフェクターの踏み損ないもあったりするし。そのあたりに気を遣っていると、手離しでは楽しめないというか」

――木幡さんも、同じような悩みはありますか?

木幡
「エフェクターも最近のものは、音色の数が異常に多くて。できることが多すぎて逆に何も生まれなかったり、人間のほうがついていけなかったり(笑)。決め打ちでできるところから、僕は一芸に秀でるタイプのもののほうが良いですね」

――結局帰ってくるのはこれ、みたいなエフェクターの類はありますか?

木幡「ディレイですかね。これを使うとなんでも良く聴こえて、たちどころにギターが上手くなるんだよね(笑)」

――ディレイのなかでもこれ、というのはありますか?

木幡「特にはないんですが、一番最初に使ったBOSSのものがもっとも馴染んでいます」

――ずっと使っているだけに使い勝手がいいと?

木幡「最初に使ったのが〈ディレイといえばこれ!〉というもので、他のディレイだとちょっと違和感があったりして」

――斎藤さんはどうでしょう?

斎藤
「僕はLINE6のマルチ・エフェクターですね、単体のエフェクターは使っていなくて。ヤセイの曲はこれじゃないとできないんですよ。単体のものを使 うとなると膨大な量になるし、それでもいまやっていることを再現できるかどうかわからない。そうやって考えていくとやっぱりLINE6かなと思います」

木幡「LINE6はM9とか?」

斎藤「そうです、それのもっとでっかいやつ。」

木幡「俺もあれ使ってる。たぶん俺が持ってるもののほうが小さいかな。あれいいよね」

斎藤「便利ですよね」

Yasei Collectiveの2014年作『so far so good』のツアー・ファイナルのダイジェスト映像

 

――どういったところが便利ですか?

斎藤「僕が使ってるのは、インプットとアウトプットの端子がいくつもあって、ひとつのボードで全部コントロールできるマルチ・エフェクター。特にヴォーカル用の端子があるものはあまりないので、すごく助かっています」

――フレーズや各楽器との絡みなども関係するかと思いますが、音色がいろいろあるなかで、どういう意図で選ぶのでしょう?

木幡
「場合によりますね。はっきりこんな音が出したいとイメージしたものを作る時もあるし、適当にいじってみて偶発的に出てきたものを使う時もあります。シンセ系の音は、音自体はカッコ良くても音がデカくならなかったりしない?」

斎藤
「ありますね」

木幡
「そういったジレンマはあります。ギター用にチューンされてるエフェクターはたいがい適正なヴォリュームになっているんですけど、シンセ系のエフェクターはそもそも奇抜なものなので、そのあたりは優しくなかったりします。音自体はカッコイイけど、実用に際しては足りないというか」

斎藤
「そうですね」

――でも音的にはカッコイイからやっぱり使いたいと。

木幡
「そうするとなると、もうひとつエフェクターを噛ませて音を大きくしないといけない」

――そこはいまだにトライ&エラーが続いていると。斎藤さんはどうですか?

斎藤
「僕も同じくです。本当にいろいろな種類のエフェクターが入っているので、ひとつひとつ試しています。イメージ先行の時と、まずはこの音ありきでという時と、大体2パターンです」

――やはり実際に試してみるんですね。

斎藤
「はい。ただ、一人で弾いていた時はすごくいい感じだったんだけど、バンドでやってみたら全然使えない、という場合もあります。最近はだいたい見当はつくようになってきましたが、いまだに読めないところがあるので、そこはなかなか難しいですね」

木幡
「あの感じはがっかりするよね(笑)。〈超イイと思ってたのに!〉というのは、結構あります。そんな時は自分のせいじゃなくて、スタジオの風水が悪いと思い込むようにしてるけど(笑)」

――ハハハ(笑)。一方で、プレイヤーとして、バンドのなかで自分のスタイルをどう作っていったのでしょう? 先ほどおっしゃっていた、ニルヴァーナのイメージでいまもいるのか、それともちょっとずつ変わっていっているのか?

木幡
「ニルヴァーナが基本的にやっていることは、Aメロがクリーンで、サビで歪みを踏むというものだと思うんですが、自分もほぼ同じだと思っています。Aメロとサビでただエフェクターを変えるだけという考えでいるので。テクニックで自分をアピールするよりかは、もっと道具みたいに使いたいというか、ギターを〈電気を流して音を変える道具〉という程度の使い方をしたいと思っています」

ニルヴァーナ“Lithium”の92年のライヴ映像



――いわゆる〈ギタリスト〉みたいな意識はあまりなく、ギターやシンセなどといった〈道具〉を使って音を出していると?

木幡「そうですね」

――斎藤さんはいかがですか?

斎藤「僕もまったく一緒で、自分がギタリストという意識はないです。なのでギタリストらしい人を見ると、やっぱりすごいなと思ってしまいます。僕も太郎さんと同じくギターを道具として使っているので。それ自体を好きになれないと言ったら語弊がありますが、ギターだけに興味があるわけではないんです」

――そういう点でも木幡さんと話が合うと?

斎藤「そうですね、そのあたりも通じるものを感じています」

――ヤセイはまずあのリズムがあって、その上にどう要素を乗っけていくか、という発想で曲作りをしているのでしょうか?

斎藤「曲を作る方法は2通りあって、みんなでジャムるか、誰かがデモを作ってくるか。比率的には、僕がデモを作って、そこから発展していくほうが多いです。(デモを)細部まで作り込むほうなんですが、ドラムは、〈これ人間にできるのかな?〉というフレーズを打ち込んだりするんですよ。“radiotooth”のAメロのリズムも、僕の入れた打ち込みをがんばって再現してくれて。それで〈あ、これはできるんだ〉と思ったら、さらにもうひとつ難しいパターンを入れたりして、挑戦状を送りつける、みたいな(笑)」

――どんどん追い込んでいくと(笑)。

斎藤「でもみんなでジャムる時は、逆に〈それ、どうすればいいんだろう?〉というのを求められたりするので、常に殴り合っているというか(笑)」

――メンバー内でやり合っていると(笑)。前回の松下マサナオさんとクラムボンの伊藤大助さんの対談で、まさにその“radiotooth”のドラムのお話を聞きました。僕は、リズムに関しては松下さんが主導で考えているのかなと思っていたんですよ。

斎藤「もちろん大元には彼の素晴らしいドラミングのセンスがあるので、ヤセイのデモを作る時はそれを踏まえて僕なりにさらにアレンジをしていくという感じです」

――では、アベンズの曲作りの方法論のようなものはありますか?

木幡「基本的には僕がデモみたいなものを作るんですが……いわゆる普通の曲作りだと思います」

――結構しっかりとデモを作り込むのか、それともセッション性の高いものなのでしょうか?

木幡「場合に拠りますね。すごくラフなものもあれば、大まかに全体像が決まっているものもあるし。最近はサンプリングやシンセのシーケンスのようなものを作ることも多くなって、そういったエレクトロニクスの比率が多いものに関しては、がっつりと作っていきます。avengers in sci-fiもヤセイと同じくドラマーが重労働させられるというところがあるから、〈うちの話と似てるなあ〉と思って聞いてました(笑)。BPM180でハットを刻めるとわかってしまうと、やらせ続けちゃうという。ドラムンベースみたいなとんでもないビートを叩かされたり(笑)」

――リズムに関しては、エレクトロ二ックな楽曲を聴いて〈これなら人力でできるかな〉といった感じでやっているんでしょうか?

木幡「エレクトロニックなものからヒントを得ることはこれまでは多かったんですけど、エレクトロニックなものって重さや太さなどドラムの音色で持っていることが多いのかなと。音の質感が違うだけだからと思って生音でやろうとすると、全然そのムードが出なかったりするので、そういう部分で工夫は必要になりますね。とはいえ、俺らも最近はツェッペリン・オマージュみたいなことをやっているので、そういうこともやっていないのですが」

レッド・ツェッペリンの73年のライヴ映像


――一方でロックな部分もありますか?

木幡「そうですね。ようやくロックの気持ち良さに目覚めました(笑)」

――斎藤さんはビートを生で変換する時に、何かポイントとしていることはありますか?

斎藤「やっぱり打ち込むとどうしてもエレクトロっぽくなるんですよね。僕はバンドでいつも向かいで松下がドラムを叩いているのを見ているので、フレーズを打ち込む時にその姿をイメージしています。例えば、シンバルの1拍目と2拍目の音はきっとこうやってこう叩くから……とイメージしていくと、エレクトロニックと生ドラムの中間くらいのものが出来てくる。すごく細かい作業になるので気を遣ってやっていますね」

――なるほど、実際に叩いたらこうなるという画をイメージして。

斎藤「なるべく再現して、頭の中のイメージを形にするようにしています」

――確かにそれは相当細かい作業になりますよね。

斎藤「でもなぜだかそれが一番楽しいんですよね(笑)。僕は生のドラムは演奏できないので、その(打ち込みの)作業で〈このフィルがカッコイイな〉というのが出来るとすごく楽しくなって」

 

~互いのバンドのミュージック・ビデオを鑑賞しながらトーク・セッション~

avengers in sci-fi “Citizen Song”

斎藤「これは〈Unknown Tokyo〉の1回目(2015年2月に新宿LOFTで開催)ですか?」

木幡「『Unknown Tokyo Blues』(2014年)というアルバムのリリース前に、告知とプロモーションも兼ねた無料ライヴをやって、その時の映像」

――(イントロが)ツェッペリンだ(笑)。

斎藤「(50秒頃)いまのピロピロという音はライヴで使ってます? それとも流してます?」

木幡「これは弾いてる」

斎藤「弾いてるんですか! 太郎さんはカオス(パッド)で?」

木幡「ピッチシフターディレイ(PS-3)。これは昔のエフェクターなので中古じゃないと手に入らない。BOSSから出ているものです」

斎藤「微妙にギターにダブル・エコーのようなものがかかっているのも、ライヴ中使っていますか?」

木幡「LINE6のシンセ系の音」

(じっくりと鑑賞)

斎藤「この曲は音の種類というか、使っている楽器が少ない?」

木幡「そうだね」

斎藤「(3分20秒頃)いまのところは、ライヴではキーボードで音程を取ってるんですか? キーボードで弾きながら、ヴォコーダー・パートを……?」

木幡「ヴォーカル? あれはたぶんオートチューンで、TC-Heliconのやつ」

斎藤「しかしカッコイイ曲ですよね……」

――太郎さんが曲中でこだわったポイントは?

木幡「なんだったかなあ。もともとツェッペリンへのオマージュということで、〈移民の歌〉のリフを丸々使っているんですが」

――人力サンプリング的な。

木幡「〈ケミカル・ブラザーズあたりがツェッペリンをサンプリングして曲を作ったら〉、みたいなイメージで作った曲で。ギターを弾き倒しているほうではあるんですが、これはプレイというよりかはサンプリング素材に近いイメージです。エレクトロニックな要素と、ツェッペリンみたいなレトロというかクラシカルな要素のバランス感。機械的な要素と人間的な要素の融合という」

 
Yasei Collective “radiotooth”

木幡「(50秒頃)ここはエレハモ(エレクトロ・ハーモニクス)?」

斎藤「そうですね」

木幡「ギターの音色自体は変えてないの?」

斎藤「変えてないです。Sonuusというメーカーのギター用MIDIコンバーターを付けて、そこからMIDIの信号で音程を送っています」

木幡「エレハモにMIDIは入るの?」

斎藤「入ります。なのでキーボードでもできるんです」

木幡「曲の前半・後半でシンセ・ベースが生のベースになるってカッコイイよね」

斎藤
「そうなんですよね」

――ところで、ヴォコーダーに関してこだわりはあるんですか?

斎藤「いま使っているものはわりとちょうどいいです。みんなが使っているような、ヴォコーダーらしいヴォコーダーの音でもなく、ちょっと独特の音がするところが好きで使っています。それと、ギターで動かせるヴォコーダーはそんなにないので、これかなと思って使っています」

――木幡さんはいかがですか?

木幡「僕も同じくです。ギターで動かせるヴォコーダーでこんなにコンパクトなものは限られているので、消去法的にそこへ辿り着きました。ギターの音色を変えるとヴォコーダーも変わったりするんですが、そういったいまはしていない使い方も、今後はやってみようかなと思いますね」

斎藤「太郎さんはTC-Heliconのどれを使っていますか?」

木幡
「〈シンセ〉という、紫色のやつ」

斎藤「ヴォイス・ボックスは何に使ってるんでしたっけ?」

木幡「ヴォイス・ボックスは、それこそ宅録みたいな使い方をする時に」

斎藤「なるほど」

木幡「ヴォイス・ボックスはエフェクターも一応通ってるから、エフェクターを変えれば、また歪んだりもする。……ヴォコーダーはほぼあれしかないもんね」

斎藤「そうですね」

木幡「TC-Heliconも一応できるんだけど、本当に数が限られているので。エレハモが潰れたら僕らは失業ですよ(笑)」

斎藤「困っちゃいますよね(笑)」

木幡「機材への依存ってあるよね……たまに怖くならない(笑)?」

斎藤「そうなんですよね」

木幡「突然廃盤になったりもするので、ツアー中に壊れたらどうすんだと(笑)」

――こういった話を共有できたり、あるいは最近気になるプレイヤーはいますか?

木幡「有名な人でも良ければ、セイント・ヴィンセント。去年くらいから聴きはじめたんですけど、あの人のファズがすごくて。ファズの音作りに命を懸けてるみたいな、結構変態ですよね(笑)。曲を聴くというよりかはむしろファズの音色を聴いています。自分と若干近いものは感じていますね」

セイント・ヴィンセントの2014年作『St. Vincent』収録曲“Birth In Reverse ”


――斎藤さんはいかがでしょう?


斎藤
「こういう話は本当に太郎さん以外とはできないです(笑)。僕も同じく有名どころを挙げると、ジェイムズ・ブレイクのギタリスト(エアヘッド)。彼も、ギターをちょっとヘンな音で弾きつつ、サンプラーも叩いたりしていて――なんか〈俺が最初にやってたんだぞ〉みたいな気持ちで見ています(笑)」

エアヘッドが参加しているジェイムズ・ブレイクの2015年のライヴ映像

 

――ハハハ(笑)。ではお互いに、気持ちを共有できる日本国内で数少ない仲間だと。

木幡「エフェクターを使う人がまず、あまりいないよね。派手な使い方をする人もいないし」

斎藤「ギタリストの人はギター本体やアンプはすごく好きですけど、僕にとってそれはそこまで重要なファクターではなくて、〈どれを使えばヘンな音が出るのか〉をどうしても考えてしまう。そこがちょっと違うところですね」

木幡「そのヘンな音を出すのに、ヴィンテージ・ギターはいらないよね(笑)」

一同「ハハハハハ(笑)」

木幡「アンプにこだわったところで、あれはアンプから出てないでしょ?」

斎藤「一応アンプから出していますけど、ギター・アンプでは出していないですね」

木幡「ギター・アンプじゃないんだ」

斎藤「最近はアクティヴ・スピーカーで出しています。ちょっと前はキーボード・アンプで出していて。でもやっぱりギターの音はギター・アンプで出したほうがいいなというのは最終的な結論です」

――その理由は?


斎藤「ギター・シンセや普通のギター以外の音は、アクティヴ・スピーカーが理想です。ギター・アンプじゃなくて、ライン系のスピーカーで出すのが一番気持ちいい。純粋なギターの音色は、本当はギター・アンプで出すのが気持ちいいんですが、回線やそのあたりの利便性を考えると、現状はシンセ系の音が多いので、アクティヴですべて出しているんです。アベンズはそのあたりすごくこだわってますよね? ギター・アンプを一人2、3台使っていたような」

木幡「昔は使っていたけど、最近はファズをラインへ直で送るのが好きです。シンセ系の音もそうだけど、ギター・アンプで出すと曇ってしまうというか、いわゆるギターの空気感になってしまう。飛び道具じゃないけど、ちょっと違った質感を出したいと思ったら、アクティヴ・スピーカーのほうがギターみたいなクセが出ないし、ギターと距離感が変わるので、おもしろい音になりますね」

――アベンズが先駆けとなって、ヤセイも追随して……こういったプレイヤーがもっと増えていくとおもしろいですね。

木幡「俺が先駆けというのも……なんだかおこがましい話です。海外のバンドのフェス映像を見ると、〈この音はギターで出してたんだ〉という意外なものがあったりしますよね。ベーシックなバンドでも、思っているより実験的だったりだとか。日本だとギターはギターで音を出すという感覚が強いのかなという気がします。あまり実験的なプレイが受け入れられないのかもしれません。海外だとそもそもの前提が日本と違うというか、ギタリストがエフェクターを使ってヘンな音を出すのがある程度までは普通で、大きなフェスにもそういったバンドが出ていたりします。日本のギタリストは少し古典的というか、保守的な人が多いイメージはありますね」

――ギタリスト信仰のようなものは根強いのかもしれないですね。


木幡「ライヴハウスのレヴェルだといるんだと思うんです。フェスも規模が大きくなっていったり、オーヴァーグラウンドになってくると淘汰されてしまう」

――ギターもある種の道具だとポジティヴな意味で捉えて、そこからより自由でクリエイティヴな発想をする、という考え方が広がってもおかしくないですよね。

斎藤「そうですね」

木幡「本当はそうあって然るべきで、これが普通なんだという意識でやってはいます。最近はそうでもなくなってきましたが、以前はオリジナルの曲を作るんだったら何か個性的なことをしなきゃいけないという考えに囚われていたところはありました。でもやっぱりギターは歪ませてソロを弾いたほうが気持ちいいですからね(笑)」

――でも、そうやってある程度自分のスタイルを確立したからこそ、一周してツェッペリンをやってもいいかと(笑)。

木幡「そうですね」

斎藤「もうちょっとみんな実験的に、いろいろ試していってもいいんじゃないかなと思います。僕みたいにアンプ・シミュレーターで作ったギターの音をアクティヴ・スピーカーから出して、それをマイクで拾うなんて人は全然いない。近年の傾向として、アンプ・シミュレーターを使うギタリストが増えてきているのに、それをやっている人がいないんです。ギター・アンプで出すのとアクティヴ・スピーカーで出すのとではどちらがいい音かというのはまた別の話ですが、アンプ・シミュレーターをライヴで使うなら、自分のアクティヴ・スピーカーを持つ人が増えてきてもおかしくないはずなのになぁと僕は思います。みんなもう少し考え方を変えてみたり、いろいろ試したりしてみれば、おもしろいバンドや新しい音楽ももっと生まれてくるんじゃないかな」

――これからはヤセイがお手本というか、体現することでその道を示していく存在になってほしいですね。


斎藤「でも……あまりわかってもらえないんですよね。ギターじゃない音でメロディーを弾いていても、聴いただけだとギターで弾いた音だとわかってもらえないんです。以前、『Conditioner』(2013年)というミニ・アルバムを出した時に、全部ギター・シンセの音でメロディーを弾いてたんですが、雑誌に載ったディスク・レヴューではやっぱりギター・シンセの音だとわかってもらえていなくて(笑)」

一同「ハハハハハ(笑)」

斎藤「一言も触れられていなくて(笑)。まあそうだよな……と思いつつ」

――うーん……難しい(笑)。まあそこはYouTubeの時代でもあるし、映像などでアピールをするということで。

斎藤「とにかく観てもらわないと(笑)」

 

Yasei Collectiveニュー・シングル“radiotooth” リリース・パーティー

日程:2016年1月30日(土)
会場:東京・代官山UNIT
開場/開演:16:30/17:00
チケット:前売3,000円/当日4,000円
ライヴ:Yasei Collective/FULLAROMOR
DJ:社長(SOIL & "PIMP" SESSIONS)、仰木亮彦(在日ファンク)
オープニング・アクト:沖メイ(Za FeeDo)
⇒そのほか詳細はこちら

※〈ヤセイの同業ハンティング〉記事一覧はこちら