盟友の2人が放つ第2ラウンド
アルバムの表題どおり、井上智(g)と北川潔(b)の共同作業としてはこれが2作目。12年前の第1弾『ライヴ・アット・スモーク』にも増して2人が醸すサウンドは濃密で旧知ならではの心地よき親愛が全編に糊塗された。出会いから既に35年が経とうとしている。
「2人とも関西出身で、大学卒業後にいくつかの地元バンドで顔を合わせるようになります。すごいベーシストが出てきたと思いました。そしてほぼ同時にニューヨークへ渡って活動を始めますが、北川はいきなりウィナード・ハーパーからレギュラーに抜擢され、僕はジム・ホールやジャック・マクダフや、様々なレジェンドとの共演を適えていきました。そんな頃にまた北川と再会し、互いに多忙ながら懇意にするウェスト・ヴィレッジのレストランでの日曜日昼下がりの気楽なギグを、このデュオでやりだすんです」(井上)
演奏の相性良さは本人たちも認めるところで、北川は井上のギターを「あのバッキングに乗せられてやるソロが楽しくてしようがない」と言うし、井上は北川のベースを「心地よい風のように軽快にプレイを前へ押しだしてくれる」と評する。じつは井上の心の中に、ジャズを始めた頃から抱き続けた野望があった。愛聴盤『アローン・トゥゲザー』は、ジム・ホールとロン・カーターがニューヨークのクラブで録ったライヴ作品。いつかあのようなジャズ史に残るベースとのデュオを、本場ニューヨークの地でライヴ録音してみたい…。その夢の実現が、アップタウンのジャズ・クラブ〈スモーク〉で録音をした、前作だったわけである。
「あれから11年が経っていました。僕は2010年に帰国していたし、彼は向こうで大御所ケニー・バロンのもとに世界的活躍をみせていて、さすがにデュオが復活する機会はないだろうと思っていました。でもどうしてもあの時の第2ラウンドを録りたくて。それで一度彼が来日した折にライヴをセッティングすると、思ったとおりの大盛況。早速準備をはじめ、一昨年暮にまたやって来た北川をつかまえて、クラブでなく今度は2人で録音スタジオに入ったんです」(井上)
録音環境による違和感は1ミリも生じなかった。録音日のために3度のライヴを持ち具合の万全は確認していたし、以前に増して、成長した両者の老獪な対話の妙味が、瞬間瞬間で躍りあがることになっていた。
「歌心溢れるアドリブはもちろん、智さんの素晴らしさはやはりバッキングでした。今回もベースでソロを弾くのが楽しくて、また2人の信頼関係がここに蘇り、2つの楽器は濃厚に結ばれていましたね」(北川)
発売日前日から3月初頭にかけて、このデュオ・ユニットによる久方ぶりの全国ツアーが決行される。
LIVE INFORMATION
井上 智&北川 潔『セカンド・ラウンド』リリース記念ツアー
○2/24(水)宮津:玉田寺
○2/25(木)大阪梅田:AZUL
○2/26(金)京都:le club jazz
○2/27(土)金沢:ジョーハウス高尾台店
○2/28(日)岐阜:スタジオF
○2/29(月)浜松:ジャズを楽しむ会
○3/2 (水)北千住Birdland
○3/3 (木)阿佐ヶ谷jazz bar KLAVIER
○3/4 (金)南青山:body&soul ほか
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