音楽観という意味では息子はまだ及ばない。アンリ・テキシェの作る音楽はいつの時代もクオリティに濁りがない。40年余りの彼の軌跡を辿っても軟弱な作品は覚えがない。セバスチャンと共にバンドの骨格はマヌ・コジア(g)が作っている。メセニー以降のジャズファンにもアピールするサウンドが横溢し、生で聴いたら叫びだしそうな情念の爆発を感じるフロント二人は、時代に翻弄されずに王道にいる。冒頭曲の中間部でのベースとギターのユニゾン部分からのベースの弦の本来の響きを多用したソロこそはテキシェの真骨頂だ。オーネット同様に音楽に真に対峙することを要求するハイレベルな一枚。