LADY FLASH
シュール&ポップなユーモアで煙に巻く、大阪発の脱力インディー・パンク・バンド!

 「日常の苛立ちや不快な気持ちになったことなどをポップな曲に落とし込んでいます」――バンドの身上をそう語るのは、大阪発の男女混合4人組=LADY FLASHのソングライター、nicoflash(ヴォーカル/ギター:以下同)。メンバー交代を経て完成した彼らの初フル・アルバム『恋するビルマーレイ』がもう最高だ。ネオアコギター・ポップ調の蒼いギター・サウンド、全員参加(?)の素朴なコーラス、アフロ・ポップ風味の躍動感のあるリズムから筆者が想起したのは、『C86』前後のUKニューウェイヴヴァンパイア・ウィークエンド以降のNY周辺のギター・バンド。一聴するとやたらチャーミングなのだが、そのポップネスの裏側に、どこか全力で脱臼しにかかっているようなポスト・パンク気質の窺えるところがおもしろい。

LADY FLASH 恋するビルマーレイ Dead Funny(2016)

 「まさにその通りです! それに加えてペイヴメントディーヴォのような物事を斜めに見ているバンドに惹かれるので、そんな要素も大事にしています。今回は、アレンジがおもしろいなーと思っているボーン・ルフィアンズドラムス、最近だとビーチ・フォッシルズに影響を受けて制作しました。特にボーン・ルフィアンズの2013年作『Birthmarks』はパワフルでパンキッシュだった彼らがいい意味で成熟しているのを感じて、パンク・バンドからいまの音楽性に変化していった自分たちと重ね合わせてしまいます」。

 「自分のことを『ロスト・イン・トランスレーション』のビル・マーレイだと思い込んでいるストーカーの歌です。でも、彼自身も自分のストーカーとしての部分に悩みを抱えているという設定」だという表題曲を筆頭に、シュールなユーモアが弾ける歌詞もこのバンドの大きな魅力。特にリフレインを多用しながら〈スタバに行ってスタバりたい〉といった素通り不可避のパンチラインを繰り出す“とらばーゆ”の破壊力たるや! 女性ヴォーカルがメインの同曲は相対性理論好きにハマりそうな中毒性もあって、このバンドの可能性をさらに広げているような気がする。

 「歌える女性が2人入ってきてくれたので、ストレートでポップな曲は彼女たち、捻くれていて脱力した曲は僕が歌っていこうと。今後も女性ヴォーカルの曲を増やしていきたいです!」。