脳裏で錆び付いていた強い思いが、いま鮮やかでポップな色彩を放ちはじめた――意味深で個性豊かな楽曲を取り揃えて、早くもファースト・アルバムの完成です!

 「活動するにあたって名前をどうしようか?って決める時に、〈お寿司〉とか好きな色とか、自分の好きなものをキーワードとしていろいろ挙げていって、そのなかに鉄の〈錆〉があったんです。そこにスタッフさんが引っ掛かって(笑)。一眼のカメラで写真を撮るんですけど、鉄が錆びた椅子とかの被写体が好きなんです」。

 〈アナタの脳裏で錆び付くアイドル〉という、わかるようなわからないようなコンセプトの由来についてニコニコと話すNAOMiRUSTY。錆=ラスティというわけだが、その存在が記憶の奥底に錆び付いたままだった人にとっても相応しいネーミングなのかもしれない。昨年11月に〈復帰宣言〉をした彼女は、椛田ナオミ名義でモデル/タレントとして活動し、かのエレクトリックリボンにNAOMiとして在籍していたその人。詳細はシングル・リリース時の記事でも記したのでアレだが、そもそもエリボン加入前にバンドで活動していた彼女は、さらに遡ればティーンの時分にはアイドルを志望して某スクールに籍を置いていたこともあるという。

NAOMiRUSTY 意味深ラスティガール doles U(2016)

 それゆえ歌って踊ることへの思いを断ち難かったのだろうが、そんな彼女に力を貸したのはDr.Usuiだった。(M)otocompoで活躍する傍ら、CM音楽の制作やアイドルのプロデュースでも名を馳せる彼は「もともとグループ時代にしょっちゅう対バンしてて……いまのエリボンちゃんともよく一緒にやってるけど(笑)、けっこう特別な存在だったんです」(Dr.Usui)とのことで、縁は続いていたのだろう。結果としてUsuiがプロデュースする形で、ディスクユニオンの新設したアイドル・レーベル=doles Uの第1弾アクトに選ばれたNAOMiRUSTYは、まず限定シングル“サスティナブル しゅらしゅら”をリリース。「CDが出来上がった時は泣きましたね。いま思い出しただけでも泣きそうになる(泣)」というデビューから、年が明けてすぐに初めての全国流通シングル“ラニーニャ夜”を発表し、そこから駆け足でファースト・アルバム『意味深ラスティガール』のリリースまで辿り着いたというわけだ。

 作/編曲はすべてDr.Usuiが手掛け、ゆるめるモ!の大半の曲に詞を提供している小林愛が作詞を担当するという陣容は先行シングルと同じ。ただ、インストの“RESURRECTiON SUCCESSiON”を冒頭に据えたアルバム・トータルの仕上がりは予想以上にカラフルでヴァラエティー豊かなものになっている。

 「アルバムを作る際に考えてたのは、極力これまで彼女がやっていないような楽曲を、以前の彼女を知ってる人も許容できる範囲内でやってみよう、というものでしたね」(Dr.Usui)。

 往年の森高千里を思わせるバブリーなユーロ歌謡“ラニーニャ夜”、ストレイなニューウェイヴといった印象の“LOOK AT MY JUMP”、スウェディッシュ・ポップ風の“使命と白紙どちら?”、清らかな歌声をホーリーな音像で包み込んだ“観光”、パンキッシュなロック・ナンバー“見上げた空は笑ってはいなかった”など、楽曲ごとの醸し出すフレイヴァーは実に多彩。「自分自身に近いと思える部分はないです(笑)」という文字通り意味深な詞の魅力も伴って、NAOMiRUSTY独自のクセになる個性が早くも確立されている印象だ。とはいえ本人は謙虚にこう語る。

 「パフォーマンスのレヴェルもまだまだですし、いままでステージにはいつもバンドやグループのメンバーがいたので、一人きりというのはまったく余裕がないですね。(寺嶋)由芙ちゃんみたいなソロのアイドルさんはすごいなって改めて思いました。いまはプレッシャーのほうが強くて……視線を集めて快感を覚えたりっていうのは、まだないです(笑)」。

 リリース後の4月3日には初の主催イヴェントも控え、いよいよ活動を本格化させていくNAOMiRUSTY。「〈TIF〉みたいなイヴェントに出たいです」という目標も掲げる彼女の音楽と存在感は、さらに多くの人の脳裏で錆び付いていくことだろう。

 

個性豊かなポップ・アクトが集うエレキュートな近未来

 かつて、現在のような図式のアイドル・シーンが確立されるより前、フューチャリスティックなエレポップやキュートなテクノ・ポップを標榜するアーティストたちのフィールドがあって、ものすご~く大まかに言ってしまえばNAOMiRUSTYも、そのカラフルな世界を演出しているDr.Usuiも、そこにコミットしてきた名前でありました。その両者がここで再会したということは、解釈自由なアイドル勢もKAWAII系も区別することなく、多様なフューチャー・ポッパーの相互乗り入れが改めて活発になっている現状の、ひとつの表れなのかもしれません。

 Dr.Usuiが後見するシンセダンスポップユニット=Kit Catはもちろんその系譜で愛でることのできる存在ですし、佐々木喫茶(レコライド)曲で個性を発揮するKOTOやリナチックステイトもそうでしょう。また、その路線の先駆けでもあったSaoriiiii、先述のKOTOやTOKYO喫茶を手掛けるプロデューサーとしてもシーンを横断するSAWA、さらにSaoriiiiiやアイラミツキとの仕事もあるCANDLESやあんどりいらんど。といったユニットも、サウンド・クリエイターとして活躍するPastel Pantsこと里本あすかもこの界隈を支える顔ぶれと言えます。一方ではミライスカートやCupitronのようにサウンド・カラーとしてテクノ・ポップを掲げる人たちも忘れちゃいけません。もちろん個々の音はさまざまですが、とにかくこういうポップな未来を望む人にとっては好ましい状況になっているということですね! *轟ひろみ

Kit Catの2015年作『SCRATCH YOU!』収録曲“ハングアラウンド”
Saoriiiiiの2016年作『NOSTALGY』収録曲“チャップリン・オーケストラ”
SAWAの2016年作『踊れバルコニー』収録曲“踊れバルコニー”
ミライスカートの2016年のシングル“千年少女~Tin Ton de Schon~”