(C)Carole Bellaiche

ドヴォルザーク、バルトーク、ドホナーニ~カップリングの妙を楽しむ

 音楽の時間を明晰に描き響かせてゆく、その緊密な快さ。2003年に音楽院の仲間たちで結成されたモディリアーニ弦楽四重奏団、その創設以来変わらぬ4人が重ねてきた録音の数々には、切磋琢磨の賜物が呼吸している。モンパルナスで活躍したかの画家の名を冠した彼らは、Nascorからの2006年のデビュー盤に続いて2008年からはMirareレーベルで録音を開始。ヴァイオリンのロイック・リョーいわく「ハイドンメンデルスゾーンブラームス…と18世紀から19世紀にかけての独墺系レパートリー、弦楽四重奏というジャンルの核をたどるように録音して来ましたが、僕らのオリジナリティをみせるものとしては、サン=サーンスドビュッシーラヴェルとフランスの作曲家たちを収録したアルバムもあります(2012年録音)。最新盤はそのどちらとも違って、ドヴォルザークバルトークドホナーニと東欧の作曲家を録音しました」

QUATUOR MODIGLIANI ドヴォルザーク:弦楽四重奏曲第12番ヘ長調『アメリカ』Op.96/バルトーク:弦楽四重奏曲第2番/ドホナーニ:弦楽四重奏曲第3番イ短調Op.33 Mirare(2015)

 昨年のこれがまた面白いアルバムで、全く個性の異なる作品が互いを照らし出すカップリングの妙も味わえる。ドヴォルザークの人気作《アメリカ》から、歌の陰翳を丁寧に彫り込みつつ響きの立体感をクリアに魅せるアプローチ。それがバルトークの弦楽四重奏曲第2番、調性感も形式感も変化の豊穣へ溶けてゆくような音世界を見透かしてみせるような演奏へ連なってゆく。ヴィオラのローラン・マルフェングいわく「初めて聴いてぱっと納得のゆく美しさとは違いますが、特殊な音楽言語へぐっと深く入り込む時間をとっていただくことで、その比類ない美しさに気づいていただけると思うんです」。リョーも「家でバルトークの録音をかけると遊んでいた子供たちが寄って来て喜んで聴いている(笑)。多彩でプリミティヴな要素も採り込んだ音楽は、古典的な音楽言語に囚われない感性には自然に聴こえるはずです。続くドホナーニの第3番も構築至難な曲ですが、ブラームスやバルトークも意識させるこの作品を入れることでアルバム全体の流れをより明確に感じていただけるはずです」

 2011年のアルバム『INTUITION~直感』でも、モーツァルトシューベルトと併せて(マイナーだが優れた)アリアーガ作品を録音したり、時代をあらためて問い直すような選曲眼が貫かれている。今季はシューマンが〈室内楽の年〉と言われるほど集中して傑作を書いた1842年の作品――弦楽四重奏曲やピアノ五重奏曲、ピアノ四重奏曲を演奏する企画を展開、ヴァイオリンのフィリップ・ベルナールいわく「これも録音予定です。シューマンはピアニスティックな書法が弦楽器に馴染みにくく、じっくりと愛しむべき作曲家ですよね」と精緻なアプローチの成果も楽しみだ。

 


LIVE INFORMATION

ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン「熱狂の日」音楽祭2016
○5/3(火・祝)15:45~16:30 東京国際フォーラム ホールB5
○5/4(水・祝)11:45~12:30 東京国際フォーラム ホールB7
○5/4(水・祝)17:30~18:15 東京国際フォーラム ホールD7
○5/5(木・祝)11:45~12:30 東京国際フォーラム ホールB7
www.lfj.jp/lfj_2016/

モディリアーニ弦楽四重奏団 with アダム・ラルーム
~シューマン・プロジェクト1842~

○9/22(木・祝)15:00開演
○9/23(金)19:00開演
会場:王子ホール(東京)
共演:アダム・ラルーム(p)
www.ojihall.jp/