今年の9月にカナダの弦楽四重奏団、ボッツィーニ・クァルテットが初来日する。なぜ彼らが来日することになったのか、その経緯を簡単にご説明しよう。そもそもの発端は、作曲家の渋谷由香が学生のとき近藤譲氏のレッスンを受け、そこで、ボッツィーニ・クァルテットが演奏する彼の弦楽四重奏と打楽器アンサンブルのための作品の初演の演奏を聴き、大きな衝撃を受けたということであった。その後、作曲家のダリル・ゼミソン萩森英明、そして私にこの体験を話し、私たちもボッツィーニ・クァルテットの演奏を聴くことで、お互いがその認識を共有していった。また、カナダ人であるダリル・ゼミソンはボッツィーニ・クァルテットのメンバーと知り合いで曲も演奏してもらったことがあるということから、日本に招いて演奏会を開きたいという思いが大きくなり、様々な方からのアドヴァイスを受けて、Quatour Bozzzini来日公演実行委員会を立ち上げ、今に至っている。

BOZZINI QUARTET John Cage:Four Collection QB(2014)

※試聴はこちら

 しかし来日公演といっても、日本ではボッツィーニ・クァルテットのことを知っている人は殆どいないのではないだろうか? 実際私も今回の機会があるまで知らなかったのだが、海外では既に、Ultima(オスロ)、Huddersfield(英国)、Klangspuren(オーストリア)など、数々の現代音楽祭で活躍している。また彼らのレパートリーは古典から現代までと非常に広く、ジョン・ケージモートン・フェルドマンジェームズ・テニーや、ユルク・フライなどヴァンデルヴァイザー楽派の作曲家たちも積極的に取り上げている。ジョン・ケージなどだけでなく、ヴァンデルヴァイザー楽派までレパートリーにしているのは珍しく、このことは他の弦楽四重奏団とは違う、彼らの大きな一つの特長として挙げられるだろう。こういうタイプの音楽は超絶技巧より、お互いの音を良く聴き合いながら自らの音を発し音楽を作り上げていくことを求められるのだが、彼らの最新録音であるジョン・ケージの『String Quartet in Four Parts』のCDを聴くと(彼らのCDは全て自主レーベルから出ている)、お互いの音を尊重し合いながらも、個々の奏者は驚くほど自発的な音を奏でており、技術の高さはもちろんのこと、こうした音楽に適合する資質も十分あることが聴き取れる。そして演奏自体も非常に瑞々しく、新鮮だ。

【参考動画】ボッツィーニ・クァルテットのショートPV

 

 知名度に左右されず虚心に彼らの演奏に耳を傾ければ、その素晴らしさを実感することができ、同時に大きな喜びがもたらされるだろう。是非この機会に日本で彼らの公演に接し、新たな喜びを発見して頂きたい。

 

LIVE INFORMATION

ボッツィーニ・クァルテット来日公演
「ケージーその先に ~渡辺俊哉プロデュース~」

○9/5(金) 19:00開演 会場:津田ホール
「Radical Simplicity 究極の“シンプル”を求めて」
○9/7(日) 18:00開演 会場:サロン・テッセラ
「モートン・フェルドマン:piano and string quartet (1985)」
○9/11(木) 19:00開演 会場:日本福音ルーテル東京教会
「Music Without Borders presents
東洋⇔西洋—その先に ~ボッツィーニ・クァルテットと石川高(笙)の共演~」
○9/13(土) 13:00開演 会場:東京国立博物館庭園内茶室〈応挙館〉

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