作品、演奏、録音とも極めて美しい1枚。白寿ホールは都内でも有数の豊かな響きをもつが、これはその白寿でのライヴ録音。先ず驚かされたのは、白寿ホールで生演奏を聴いているのと全く同じ音がすること。さすが優秀録音で名高いマイスター・ミュージックの仕事である。そしてN響メンバーからなるヴィルトゥオーゾ・カルテットの演奏が、少しの衒いもなく、高みを目指して最晩年のベートーヴェンの思索の世界を音化している。ヴィブラートの少ない澄んだ光線のような音、まるで一つの楽器のように4本の線がより集まるさま、音楽に漂う高い気品。神格化された戦前のカペー四重奏団の名盤を思い出した。

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