「アルバムというアートを作りたかった!」~アフロビートがウネるニュー・アルバム
USブルーノートからデビューを飾ったトランベット奏者の黒田卓也が、コンコードに移籍してアルバム『ジグザガー』をリリースする。ホセ・ジェイムズがプロデュースしたクールな中にも熱気を秘めた前作とは対照的に、セルフ・プロデュースの本作はジャケットが象徴するようにカラフルで伸びやかなアルバムだ。
「前回はホセ主導のもと作りたいという方向性がまずあって、そういう意味では本当に100点満点の出来だったと思うんですが、今回は僕が行ってみたい場所がまずあって作りはじめました。それは“アルバムというアートを作りたい”ということです」
世界的に活躍するモロッコ出身イギリス在住のアーティスト、ハッサン・ハジャージをジャケットに起用したのも、トランベット奏者のソロではなく、一アーティストのアルバムとして聴いてほしいという気持ちの表れだという。それは制作面でも徹底されていた。
「デモは全部一度僕がコンピュータですべて打ち込んで作ってるんですよ。細部までこだわって作ってる。それをメンバーに聴かせて人力に変えるっていうちょっと変わったやり方です」
前作でもそういうスタイルを採ってはいたが、最終的にプレイヤーの解釈に委ねていた部分が多かったという。本作ではデモの再現を徹底させている。
「そうすることによって、昔はトランペットを吹くことしかできなかった僕が、今はベースやドラムの音はこっちのほうがいいだとか、今まではあまり気にしなかったことが演奏以上に大切だと思うようになりました。トータル・プロダクションの方に意識が行くようになったんです」
そして、トータル・アルバムとして楽しめる『ジグザガー』のサウンドを特徴付けているのがアフロビートだ。タイトル曲と、交流のあるNYのアフロ・バンド、アンティバラスと組んでカヴァーした《シンク・トゥワイス》が印象的だ。
「ドラム・パターンがアフロビートの一番大きなところになるんですけど、アルバム・タイトル曲のベース・ラインに関してはミシェル・ンデゲオチェロから影響されて書いてて、アフロビートでありながらベース・ラインがうねうね動く。自分が作るから変えてみたいと思って、そこから自然発生的に広がったんです」
この曲にはアフロビートを咀嚼した黒田卓也のオリジナリティを感じる。さらにそれをceroと一緒にコラボしたテイクも実に興味深い。音楽的な出自がまったく異なるceroとも意気投合し、同じ言葉を共有して作業を進められたという。『ジグザガー』のリリースによって、音楽家・黒田卓也のスタートが切られた。
LIVE INFORMATION
Blue Note JAZZ FESTIVAL in JAPAN 2016
ブルーノートジャズ・フェスティバル・イン・ジャパン 2016
○9/17(土)11:00開場/12:00開演
出演:アース・ウィンド&ファイアー/ジョージ・ベンソン/マーカス・ミラー/アンドラ・デイ/ゴーゴー・ペンギン/MISIA×黒田卓也/他
会場:横浜赤レンガ野外特設ステージ
bluenotejazzfestival.jp/